タゴガエル保存会会長 山口輝幸さん
鳥取市のランドマークとして市民に親しまれている久松山(263メートル)。そのふもとの住宅地にある湯所神社(湯所町1)本殿裏手で、毎年大型連休前後に奇妙な鳴き声が響き渡る。声の主は、体長3~6センチのタゴガエル。伏流水や地下水に生息する山地性のカエルで、市街地で繁殖する例は珍しいという。タゴガエルを知ってもらい、久松山の豊かな自然環境を守ろうと取り組んでいる。
取り組みの一つが、タゴガエルの鳴き声をまねる「ものまね大会」。主催者として2023年に始め、24年も春の大型連休最終日の5月6日に神社拝殿で開催した。県内外から10組が参加し、1分間の制限時間内に、工夫を凝らした衣装や道具を使い懸命に演じた。3人の審査員はタゴガエルと点数が描かれた札を示して判定。市内の小学6年生が優勝を果たした。親子で競う出場者もおり、境内は笑いと歓声に包まれた。
湯所神社の氏子でもある山口さんは、以前から春になると、神社裏手の崖付近から鶏のような鳴き声がするのに気が付いていたが、正体は不明のままだった。崖の岩場の割れ目からはかれることなく水がしみ出しており、水たまりに白いつぶつぶを見ることもあった。
19年、参拝者が地元新聞社に「奇妙な鳴き声がする」と問い合わせたことがきっかけで、タゴガエルと判明した。鳥取県立博物館の川上靖学芸課長によると、タゴガエルは春の繁殖期に雄が独特の鳴き声を出す。川上さんは「山の環境にいる動物が、ほぼ標高ゼロメートルの市街地にこれほど豊かに生息するのは他に例がない」と話す。久松山の周辺は土が多くの水を含み、天然のダムの役目を果たしていることから、市街地でありながら山地性の生き物の宝庫という。
「山にすむカエルだと聞き、驚いた」。山口さんは鳴き声の主を知った当時をそう振り返る。22年12月に守る会(後に保存会と改称)を結成。23年3月には、普段は姿を見ることが困難なタゴガエルの石像を作り、岩場に据えた。募金箱も設置し、保存活動への協力を呼びかける。
なきまね大会は新型コロナウイルスの5類移行を受け、「大声を出せる催しを」と企画した。23年の第1回は18組が参加。25年は5月6日に開催予定だ。「タゴガエルは私たちの身近に素晴らしい自然が残っていることを教えてくれた。彼らがいつまでもすみ続けられるよう、守っていきたい」と話している。【渕脇直樹】
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