記録的豪雨に見舞われた山形県酒田市で、地域特産の「刈屋梨(かりやなし)」が、秋の収穫を目前に深刻な被害を受けた。川沿いの梨畑が氾濫によって高さ2メートルを超す濁流にのみ込まれ、被害は栽培面積全体の約3割に及ぶ。農家らは「実の生育は順調だったのに、降雨から数時間で期待は消えてしまった」と肩を落とした。
豪雨から1週間が過ぎた2日午後、鳥海山を望む荒瀬川の左岸に面した畑で、三浦雅明さん(73)が厚さ50センチまで堆積(たいせき)した泥を重機で取り除いていた。「悔しい。生産が続けられるかは分からない」。7月25日早朝から降り続いた雨で川がみるみる増水し、数時間後には高さ2メートルの棚ごと水につかったという。
8月20日ごろから出荷が始まる主力品種「幸水」の準備に入る時期だったが、三浦さんが手掛ける1・5ヘクタールのうち3割に被害が出た。「再び生産する意欲がしぼんでいる」。声を絞り出した。
刈屋梨は、同市刈屋地区で栽培される梨のブランド名。明治初期に苗木を植えたのが栽培の始まりだが、常に川の氾濫と隣り合わせだった。養分を含んだ土砂が上流から流れ込み、肥沃(ひよく)な土壌を形成。強い甘みとシャキシャキとした歯触りが特徴で知られる。ただ、3代続く家業を継いで半世紀の三浦さんは「こんなにひどい被害は記憶にない」とうなだれる。
苦境に立つ産地を応援しようと、取引先などからのボランティアが支援に入り始めた。地区では復旧に向けて少しずつ動き始めた。
刈屋梨出荷組合の佐藤尚人組合長(59)によると、今後は国や市にも支援を要請しながら立て直しを図るという。「楽しみにしてくれているファンのために踏ん張らなければ」と話す。【長南里香】
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