広島で被爆した西岡誠吾さん(92)が自らの体験をまとめた書籍「少年・十三歳の原爆体験記」を、クラーク記念国際高校2年、松前雄翔さん(16)=広島市中区=が英訳した。西岡さんと何度もやりとりをしながら約1年かけて翻訳した松前さんは「使命感を持って取り組んだ」と話している。【井村陸】
松前さんが山陽高校(同市西区)に在学していた昨年夏、同校で被爆者を招いた証言会が開かれた。松前さんは広島県出身だが、タイやシンガポールなど海外での生活が長く、被爆者から話を聞くのは初めてだった。「核を使用して大勢の人が亡くなったという事実を改めて聞き、非人道的、冷酷、残酷さを感じた」と振り返る。
証言会が終わった後、被爆証言について調べている同校図書職員の小崎圭子さん(61)から、西岡さんの出版した本を翻訳してみないかと声を掛けられた。海外生活で培った英語力を生かせると引き受けた。
1945年8月6日、県立広島工業学校(現・県立広島工業高校)の1年生だった西岡さんは、学校の校門付近で被爆。同級生192人が亡くなった。西岡さんは、原爆が投下された直後の惨状の絵を描きためており、文章と合わせて2023年3月に体験記を出版した。
松前さんは、80年近く前の体験を翻訳する難しさを何度も感じ、メールや電話で西岡さんに何度も問い合わせた。西岡さんの伝えたかった内容とずれがあってはいけないと考え、英訳したものを日本語に訳して確認した。
翻訳した内容をまとめた本(B5判33ページ、税込み1320円)は今年7月中旬に完成。インターネット通販の「アマゾン」で購入できる。今後は海外で出版することを検討している。松前さんは「数十年したら被爆者の人たちは亡くなり、本当のことを知る人たちが居なくなってしまう。被爆者たちの思いを世界に発信するために力になりたい」と話した。
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