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 過ちを犯した人の社会復帰どこまで認めるべきなのか。パリ五輪では、ビーチバレーのオランダ代表選手が、8年前の児童への性犯罪で有罪判決を受けていたことから批判を浴びている。この選手は服役後に競技復帰し、代表に選ばれていた。

【映像】過去の過ちと現在について赤裸々に語る兼近大樹

 SNSやインターネットが発達し、過ちが拡散され「デジタルタトゥー」としていつまでも残り続ける現代で、過ちを犯すと何が起き、周囲はどう向き合えばいいのか。過去に自らが逮捕された経験に基づき「エス」という作品を製作した映画監督の太田真博氏とともに『ABEMA Prime』で考えた。

■兼近大樹「許されると思っていない。でも人を救いたい気持ちすら踏みにじられる」

 芸能活動を開始する以前に逮捕歴のあるEXIT・兼近大樹は、「許されると思っていない。死んでも生きていても怒られるなら、誰かのために人を救えるように生きていこうと思うしかない」と語る。「しかし、(自らが行っている)支援先や寄付先に連絡して、『金を受け取るな』と足を引っ張られる。人を救いたい気持ちすら踏みにじられるのは許せない。自分を許す・許さないはどうでも良いが、周囲には迷惑をかけないでほしい」と呼びかけた。

 常日頃から「これは“再起”ではない」と感じている。「僕自身が生きていながら、人を救える最善のやり方だ。もし自分が人目に付かないところで生きるとなれば、誰が代わりに人を救ってくれるのか。あれこれ言ってくる人たちが寄付をまかなってくれるなら、いつでもやめられる」と述べた。

■自身の逮捕歴を映画化した監督「地獄を見ると言われた」

 太田氏は2011年、不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕された。勤務先の俳優養成所に通う女性のメールパスワードを不正入手し、女性になりすまして「痴漢されるのが趣味」などのメールを複数人に送ったとして、執行猶予付き有罪(懲役刑)判決を受けた。

 経験を踏まえた映画「エス」は、1月から劇場公開されている。映画監督の逮捕報道と仲間たちの再会・断絶を描く内容だが、批判や葛藤もあった。実名報道、名指しでバッシングを受け、犯した罪を映画にしたことで「反省していない」と批判も出た。社会に戻ることにも怯えきり、明るく振る舞うことさえ許されない雰囲気になったという。

 映画化の背景には「俳優への恩返し」があった。「自分の過去をないことにして映画を撮るのは、果たしていいのか。自分が批判にさらされるリスクを負っても、この題材を選ばなければならない」と考えた。

 身近な人からも「映画なんか作っているんじゃない。そのうち地獄を見る」と言われたが、いざ公開すると、「逮捕経験がある人や、その家族に励ましのメッセージを与えられている」と気付いた。

 映画「エス」では、逮捕された本人ではなく、周囲の人物が中心に描かれている。「励ましてくれる集まりに顔を出して、神妙な顔で謝ると『暗い』と言われ、明るく振る舞うと『なに笑っているんだ』と言われる」と振り子のようなアップダウンが続いた。

■乙武洋匡「8年経ってもボコボコにやられる」

 2016年に女性スキャンダルが報じられた作家の乙武洋匡氏は、2022年の参院選、今年4月の衆院東京15区補選に立候補した。「2年前には掘り返されなかったが、今回は掘り起こされた。自分がいくら反省の意を示そうが、8年経ってもボコボコにやられる」と、今なお過去に大きく影響されていると述べた。

 また、バッシングを受ける理由を「元々の評価とのギャップも大きいのではないか」と分析する。一方で「人数に比べて『許せない』と言う人をクローズアップしすぎにも思える。『許している人も、これだけいる』と伝えた方が、寛容な社会になるのではないか」とも提言した。

■堤下敦「やったことに対する反省は一生する。ただ、僕も家族も活動をして生きていかなきゃいけない」

 これまでに複数回の交通事故を起こしたインパルス・堤下敦は、事故後の振る舞いについて「元気を貫いていた」と振り返る。「当然そこには批判は来るが、暗くなって批判を受け止める方がつらい。本当の自分で接するのが、一番正しいと思う。反省しないのも、反省しすぎもよくない。『視聴者は納得するが、周囲は納得しない』といった温度差を探るのがうまくなった」。

 堤下も兼近同様に「許されようと思ってはいない」と語る。「できる範囲のことをやったら、結果的に周囲が許してくれたが、一生(表に)出られない恐れもあった。こちら側は悪いが、『悪者を責めすぎ』では」とも感じている。

 世間からは「反省」を求められる風潮もある。「やったことに対する反省は一生する。ただ、僕も家族も生きていかなきゃいけない。『自分の会社ならクビだ』と言われるが、企業によってもパターンは異なる。努力を認めてくれる人が増えたから、今の自分がある」と感謝を口にした。

■過ちからの社会復帰に優しい寛容な社会は生まれるか

 芸能界のみならず、一般社会にも同様の障壁がある。乙武氏は矯正教育の現状に触れる。「一度罪を犯した人が、社会復帰しようとしても、受け入れ先がなく、偏見の目にさらされ続ける。そこに昔の悪い仲間から声がかかり、その道に戻されるケースが多い。社会で受け入れることは、結果的に犯罪を減らし、治安の向上につながる。寛容な気持ちを持つことが重要だ」と、再犯を防ぐことこそ重要だとした。

 兼近は「応援してくれる人もいる」と実感を語る。「認めない人でも、『なぜテレビに出ているのか』の理由を知ってもらいたい。それがヒントになる。1つだけ切り取って『こいつは犯罪者』で終わらないで、背景を読み解く力が大切ではないか」と呼びかけていた。
(『ABEMA Prime』より)

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