米空軍は1日、鹿児島県・屋久島沖で2023年11月に空軍輸送機CV22オスプレイが墜落して搭乗員8人が死亡した事故の調査報告書を公表した。変速装置(ギアボックス)内のギアの破損による左翼の故障と、操縦士が警告灯を無視して早期に緊急着陸しなかった「人為的な判断ミス」が重なったのが原因だと結論づけた。ただ、ギアが故障した根本的原因は解明されず、オスプレイは不安を抱えたまま運用を続けることになる。
報告書によると、事故機は米軍横田基地(東京都)に所属。昨年11月29日午後1時10分ごろ、空中給油訓練のため、他の2機のCV22と共に岩国基地(山口県)を離陸し、嘉手納基地(沖縄県)に向かった。しかし、機体に不具合が生じ、屋久島空港に緊急着陸を図る途中、同2時40分ごろ海上に墜落した。
オスプレイは、固定翼機のプロペラとヘリコプターの回転翼の機能を兼ね備える「プロップローター」が機体の両側にあり、飛行中はエンジンの動力を翼に伝達する変速装置の各種ギアが高速回転している。その際、さまざまな部品がすり減って内部に金属片が発生するため、自動的に燃焼処理する仕組みを備えている。
報告書によると、機体左側の変速装置のギアの一つにひびが入り、その破片によって他のギアの歯車が破損。左翼のローターにエンジンからの動力を伝達できなくなり、機体が傾いて回転し、墜落した。ただ、最初にギアにひびが入った原因は不明だ。
一方、機内では離陸から約40分後(墜落の約50分前)、変速装置内で金属片の燃焼処理を知らせる警告灯が表示されていた。その後約30分以内に警告灯はさらに4回点灯。米軍のマニュアルでは3回表示された段階で原則「速やかに着陸する」と定めているが、同機の指揮官を兼ねていた操縦士には任務を続ける権限も認められているため、飛行を継続した。
さらに離陸から約70分後(墜落の約20分前)には緊急着陸を求める別の警告灯も表示されたが、操縦士は最寄りの島ではなく、屋久島に向かった。
報告書は「操縦士の意思決定も事故の原因」と指摘した。訓練には予備機1機も参加しており、警告灯の表示が続いた段階で緊急着陸して任務を交代していれば、事故を防げた可能性があった。
さらに報告書は、変速装置の不具合の重大性に関する米軍内での情報共有不足、搭乗員同士のコミュニケーション不足なども事件の背景として指摘した。
防衛省は報告書について「信頼できる内容」と評価。事故現場の鹿児島県をはじめ、米軍のオスプレイが配備されている沖縄県など関係自治体に内容を説明し、不安払拭(ふっしょく)を図る考えだ。事故を巡っては米軍が約3カ月にわたり全世界でオスプレイの飛行を停止し、今年3月に運用停止措置を解除。その後、陸上自衛隊も飛行を再開した。【松浦吉剛、ワシントン秋山信一】
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