コーヒーにも合うと評判の岩まん=福原英信撮影

 サクサクとした食感のパイ生地で、あんを包んで焼き上げる。一口食べると、バターの香ばしさとあんの優しい甘さが口中にふわっと広がる。通販はしておらず、予約を中心に店頭販売し、連日売り切れになる人気店だ。

 山口県岩国市の銘菓「岩まん」は、「岩まん本舗 岩味屋」が1971年に初代、渋谷(しぶたに)雅史さん(故人)が創業して以来の看板商品。当初は店内に喫茶スペースがあり、和菓子や洋菓子などを幅広く出していたが、岩まんの人気が高まり、約40年前に岩まん一本の製造・販売に専念した。

 現在は一家6人で作業を手分けし、平日は約1000個、休日は約1200個を限定製造・販売する。素材にこだわり、厳選した国産のバターを創業時から使う。あんは甘さ控えめ、香料や着色料、保存料は使わない。

 「特別なことをせず、基本に忠実に。そのためにも変わらぬ素材、変わらぬ製法で、一つ一つ丁寧に」。雅史さんの長男で2代目社長の幸治さん(57)が菓子作りを語る表情は真剣そのものだ。それでも、お客さんの評判を尋ねると「『変わらずにおいしいね』と言ってもらえる。父から受け継いだ味を作り続けたい」とはにかんだ笑みを浮かべた。

 2021年春からは、幸治さんの四男栄介さん(26)が製菓の専門学校を卒業して製造の担い手に加わった。母の里美さん(57)は我が子の成長を「父(幸治さん)から教わったことを、工夫しながら自分のものにしようとしている」とうれしげに、少しまぶしそうに語った。

 初代の「こだわり」が世代を超えて受け継がれていく。【福原英信】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。