福岡地裁=福岡市中央区で2021年5月27日、吉川雄策撮影

 福岡県大牟田市で2004年に起きた母子ら4人殺害事件で死刑が確定した井上(旧姓・北村)孝紘死刑囚(40)が、養子縁組をした3人に手紙を送ることを福岡拘置所に不許可とされたのは不当として国家賠償などを求めた訴訟の判決で、福岡地裁(林史高裁判長)は31日、3人は刑事収容施設法で死刑囚が手紙のやりとりを認められている「親族」に当たると判断した。ただ、拘置所側が漫然とした調査で不許可にしたとまでは言えないとして賠償請求は棄却した。

 確定死刑囚の親族との手紙のやりとりは同法で認められているが、外部交通を目的に実態がないのに養子縁組をした親族の場合は認めないとの通達がある。

 判決によると、井上死刑囚は殺人事件の公判中に3人と養子縁組を結んだ。死刑確定後の18年6月、3人に手紙を送ろうとしたが、拘置所が「養子縁組は外部交通確保が目的だった」として不許可にしたため、提訴した。

 判決は、井上死刑囚が死刑確定前に3人と手紙のやりとりなどで交流を深めていたことを重視。「養子縁組をする意思がないとは言えない」と指摘し、親族と認めた。一方、拘置所が死刑囚の交流状況を正確に把握するのは容易ではなかったとし、賠償責任までは認めなかった。

 福岡拘置所は「判決内容を精査し、関係機関と協議した上で適切に対応します」とコメントした。【志村一也】

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