平和祈念式典にイスラエルを招待しない理由を説明する長崎市の鈴木史朗市長=市役所で2024年7月31日午後1時16分、尾形有菜撮影

 長崎市は31日、「長崎原爆の日」(8月9日)に開く平和祈念式典にイスラエルを招待しないと発表した。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を踏まえ、招待を保留していた。鈴木史朗市長は31日の記者会見で「現時点でも式典で不測の事態が発生するリスクへの懸念に変わりはなく、苦渋の決断だ。決して政治的判断に基づくものではない」と強調した。

 広島市は「広島原爆の日」(8月6日)に開く平和記念式典にイスラエルを招待し、同国側も出席の意向を示している。同じ被爆地でも判断が分かれたことについて、鈴木市長は「広島も長崎も、平穏かつ厳粛な雰囲気の式典で原爆犠牲者を慰霊したい、という思いは同じだ。招待者は違っても、その思いは共通している」と釈明した。

 イスラエルの招待を巡っては、長崎市は6月に「日々、情勢が変化しており、推移を見極める必要がある」と判断を保留。在日イスラエル大使館には招待状の代わりに、即時停戦を求める▽現時点では招待を見合わせる▽招待に支障がないと判断した時点で速やかに招待状を出す――といった内容の書簡を送っていた。

 この日の会見で鈴木市長は、イスラエルを招待した場合、批判や抗議などとして式典を阻害するような行動が起こる可能性を恐れたと説明。「原爆犠牲者の慰霊と核兵器のない世界の実現に向けた平和へのメッセージを発信することが、式典の本旨だ」と述べた。

 ウクライナに侵攻するロシアと、ロシアを支援するベラルーシは、出席者の安全確保を理由に3年連続で招待を見送っている。【尾形有菜】

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