夏休みに入り、水の事故が絶えません。全国の海水浴場が抱えている、ある深刻な問題を取材しました。

■沖に流された親子…救出の一部始終

こちらは宮崎市内の海岸で撮影された映像。離岸流に流された親子が救出されるまでの一部始終が収められています。
「助けて―!」
サーフィン中、突然、助けを求める声が。
(撮影者)「大丈夫?」
浜辺から遠く離れた沖の方には、流されたとみられる女性と幼い子どもの姿が。
(撮影者)「大丈夫?大丈夫?落ち着いて!ゆっくりゆっくり」
(動画を撮影した中川尚大さん)「結構大きな声で『助けて』っていう声が聞こえたので、岸の方を見てた時に、溺れている親子を2人見まして、これはまずいなと思って」
動画を撮影した中川尚大さん。当時、浜辺には監視員やライフセーバーなどはいませんでした。中川さんはたまたまライフセーバーの経験があったため、無事、親子2人を救出することができたそうです。
(動画を撮影した中川尚大さん)「本当に水というのはすごい危険で思っていた以上に、何もできなくなっちゃうので、突然溺れることがありえます。ライフセーバーのいる海がやっぱり安全だと思うので」

■40人→4人に…海の“守護神”が激減

酷暑が続く日本列島。今月すでに83人が水難事故に遭っており、さらなる増加が危惧されます。しかし今、全国の海岸では深刻な問題が―。ここは海水浴場の数が日本一の新潟県。他県からの海水浴客も多く年間約100万人が訪れます。
(柏崎ライフセービングクラブ理事池谷薫さん)「(柏崎では)40人以上のライフセーバーが大学生としていたんですけれども、今は4名になってしまって…」
実は今、ライフセーバーの数が激減しています。柏崎市ではこれまで10カ所の海水浴場にライフセーバーを配置していましたが、今では5つに。さらに、毎日常駐させていたライフセーバーも休日だけとなりました。ライフセーバーは命を預かる大事な仕事。その負担は1人1人に重くのしかかります。
ライフセーバーが発見したのは、波消しブロックの上で遊ぶ海水浴客。過去には間に落ちて死に至ったケースもあります。
「大丈夫ですか?けがなどされなかったですか?」
「大丈夫でした。大変ですね」
「帰れますか?」
「いや分かんない」
すると今度はあるグループに声をかけます。
「お酒を飲むと、平衡感覚なくなるのと、お酒を飲んだら…」
「飲まなくても平衡感覚もうないって」
「お酒を飲んだら海に入らないようにお願いします。」
「はい」
「飲んでいく?」
「さすがに…」

海岸の監視も、ライフセーバーの数が少ないため、休む時間を削りながら対応します。
(柏崎ライフセービングクラブ生越丈太郎さん(20))「今日も人手不足でギリギリ、人数組めたって感じですね。お客さんがいっぱいになってくるとやっぱり人が多いほうが絶対目も届くので」
一体なぜ、ライフセーバーは不足しているのでしょうか。
(柏崎ライフセービングクラブ理事池谷薫さん)「少子化もそうですけど、コロナ時期に大学生がライフセーバーの活動ができない。空白の4年5年が経過してしまって」
ライフセーバーはそのほとんどが、ボランティア。本業の傍ら行っている社会人と夏休みの大学生で、運営しているのが現状です。そこにコロナ禍が重なり、人材の育成ができず一気にライフセーバー不足に陥ってしまったのです。

■地元“海の子”育成&ドローン監視に挑む

静岡県下田市。こちらの海岸では、将来的な人手不足を見据え、新たな取り組みを始めています。
(ドローンアナウンス)「こちらは、ドローンパトロールです」
注意喚起を行うのは「ドローン」。下田市では今年の夏から導入しました。
「左行きますか、左行って正面ですぐ後ろから声かけます」
浜辺からは死角になっている岩場の後ろも見ることができます。将来的にはドローンの活用で、迅速な救助と、少人数での監視を目指しています。さらに、こちらの団体ではライフセーバーの資格を取得する費用の負担や、地元の子どもたちにライフセーバーの技術を教えるなどの人材の育成も行っています。
(小学6年生)「(ライフセーバーが)いないと溺れた時に誰も助けられなかったらやばい」
(母親)「いてくれるのがあたりまえな感じで…」
下田市でライフセービングを行ってきた山口さん。ここでは先進的な取り組みを行っていますが、ボランティアなどに頼る環境を改善しなければ根本的な解決にはつながらないと話します。
(下田ライフセービングクラブ理事長山口智史さん)「日本のライフセーバーは立場とか身分的なところがはっきりしていなくて、自治体任せになっているところがある。これから職業化していくのか、地域活動にしていくのか、そこが決まっていかないと将来像というのがなかなか描けないと思うんです」

7月28日『サンデーステーション』より

▶「サンデーステーション」公式ホームページ

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