日本原子力研究開発機構は8月、核分裂反応が連鎖する「臨界」の発生条件を調べる研究炉「STACY」(茨城県東海村・最大熱出力200ワット)の運転を、東日本大震災以降、初めて再開する。東京電力福島第1原発事故を受け、事故で溶け落ちた核燃料が固まった「燃料デブリ」がどのような条件なら臨界せず取り出せるかを調べるため、改造した。
福島第1原発内には計880トンに上る燃料デブリがあると推計されているが、その性質は解明されていない。発電所内にあった金属やコンクリートなどがウラン燃料と複雑に混ざり合っており、廃炉作業時に再臨界して大量の放射線を出す恐れもある。
改造したSTACYには直径1・8メートル、高さ1・9メートルの円柱状の炉心タンクがあり、タンク内に長さ90センチ、幅60センチの格子状の板がある。板には数千もの小さな穴が開いており、それぞれの穴に棒状の燃料などを装着することができる。
研究では、ウラン棒状燃料とコンクリート棒を混在して置いたり、燃料棒同士の間隔をあえてランダムに装着したりするなど、さまざまな「模擬デブリ」を再現した上で臨界させ、臨界量や条件を調べる。改造費は24・5億円。
改造前のSTACYは1995年に初臨界し、核燃料サイクル施設の燃料データを集めたほか、99年に核燃料加工会社ジェー・シー・オー東海事業所(同村)で起きた臨界事故の事故収束にも貢献した。2010年に当初の役割を終え、次世代軽水炉を開発するための改造を予定していた。
その直後に東日本大震災が発生。津波によって電源が喪失し、1~3号機で原子炉の炉心溶融(メルトダウン)が起きた福島第1原発の廃止措置に向けた貢献も、研究の役割として追加することになった。日本原子力研究開発機構は「安全にデブリを取り出し、保管していくためのデータを取得していきたい」と話している。【寺田剛】
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