STACYの制御室。8月以降、さまざまな模擬デブリを使って臨界にする実験を繰り返す見通しだ=茨城県東海村の日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所で2024年7月18日午後3時12分、寺田剛撮影

 日本原子力研究開発機構は8月、核分裂反応が連鎖する「臨界」の発生条件を調べる研究炉「STACY」(茨城県東海村・最大熱出力200ワット)の運転を、東日本大震災以降、初めて再開する。東京電力福島第1原発事故を受け、事故で溶け落ちた核燃料が固まった「燃料デブリ」がどのような条件なら臨界せず取り出せるかを調べるため、改造した。

 福島第1原発内には計880トンに上る燃料デブリがあると推計されているが、その性質は解明されていない。発電所内にあった金属やコンクリートなどがウラン燃料と複雑に混ざり合っており、廃炉作業時に再臨界して大量の放射線を出す恐れもある。

格子状の板には数千もの小さな穴が開いており、それぞれの穴に棒状の燃料などをさまざまな状態で装着し、臨界させ、臨界量や条件などのデータを収集する=茨城県東海村の日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所で2024年7月18日午後2時50分、寺田剛撮影

 改造したSTACYには直径1・8メートル、高さ1・9メートルの円柱状の炉心タンクがあり、タンク内に長さ90センチ、幅60センチの格子状の板がある。板には数千もの小さな穴が開いており、それぞれの穴に棒状の燃料などを装着することができる。

 研究では、ウラン棒状燃料とコンクリート棒を混在して置いたり、燃料棒同士の間隔をあえてランダムに装着したりするなど、さまざまな「模擬デブリ」を再現した上で臨界させ、臨界量や条件を調べる。改造費は24・5億円。

8月から運転を再開する研究炉「STACY」。円柱状の炉心の中央に、穴のあいた格子状の板がある=茨城県東海村の日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所で2024年7月18日午後2時40分、寺田剛撮影

 改造前のSTACYは1995年に初臨界し、核燃料サイクル施設の燃料データを集めたほか、99年に核燃料加工会社ジェー・シー・オー東海事業所(同村)で起きた臨界事故の事故収束にも貢献した。2010年に当初の役割を終え、次世代軽水炉を開発するための改造を予定していた。

 その直後に東日本大震災が発生。津波によって電源が喪失し、1~3号機で原子炉の炉心溶融(メルトダウン)が起きた福島第1原発の廃止措置に向けた貢献も、研究の役割として追加することになった。日本原子力研究開発機構は「安全にデブリを取り出し、保管していくためのデータを取得していきたい」と話している。【寺田剛】

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