お盆を控え、仏壇や墓参りなどでろうそくに灯をともす機会が増える。要注意なのが、ぬれた燭台(しょくだい)だ。燭台の皿に水分が付着していると、ろうそくが燃え進んだ際に炎が反応し、ろうそくの芯が飛び出す危険性があるという。東京都の担当者は「燭台を洗ったら、しっかりから拭きしてから使用して」と呼びかけている。
死者は過去10年で最多タイ
都生活文化スポーツ局が昨年11月に20歳以上の男女計2000人を対象に実施したろうそくの使用に関するアンケート調査によると、燭台の洗浄方法について「水で洗う・水ふき」が32%と多かった。このため、燭台をぬらした状態でろうそくに点火する実験を実施した。
陶器製の燭台の皿にストローで水を1滴垂らした場合、ろうそくが燃えて短くなり炎が水に近づくと、「パチパチ」と音を立て瞬間的に激しく燃えることがある。この際、火がついたままろうそくの芯が皿から飛び出しそうになった事例が確認された。
皿に水分が付着した状態でろうそくが燃えると、溶けたろうが水分の上に薄く覆いかぶさるようになる。燃焼が進んで炎が水分に近づいてくると水温が上昇。水分の体積が膨張し、覆いかぶさっていたろうが跳ね、炎が一時的に激しくなったと考えられるという。
ろうそくによる火災は、ひとごとではない。東京消防庁によると、2022年にアロマキャンドルなども含めた、ろうそくが原因の火災は管内で36件起きており、家屋1軒が全焼、4軒が半焼。4人が亡くなり、17人がけがをした。死者4人は、18年と並んで過去10年間で最多。火災時のろうそくの用途は、約半数の17件が仏壇や神棚の灯明だった。
「電気ろうそく」も活用を
都のアンケートでは回答者の約15%が「ヒヤリ・ハット経験をしたことがある」と回答した。詳しい状況としては▽自宅の仏壇でろうそくを使用したところ、炎が激しく上がり、仏壇が焦げた▽いつの間にかカーテンに燃え移り、ボヤになった▽ろうそくが倒れて、仏壇のシートに燃え移った▽仏壇のろうそくが点火している状態で、奥の物を動かそうとして袖口に引火しそうになった――などの回答があったという。
一歩間違えば、大きな被害につながりかねない事例ばかりだ。都の担当者は「仏壇にはさまざまな物が置かれていることが多いので、普段から整理しておくことが大事。周囲に燃えやすい物を置かず、不安定な場所では点火せず、火が消えたことを確認してからその場を離れるようにして」と指摘する。
帰省時は、子どもが仏壇を触ってしまったり、高齢者がろうそくを倒してしまったりと、予期せぬトラブルも起こりやすい。「慣れない環境では特に事故が起きやすい。仏具店では、炎を再現した電気ろうそくなども売られている。高齢者や子ども、ペットがいて不安な方は、火を使わない商品の活用も検討してほしい」と提案している。【中嶋真希】
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