自殺した男性の両親は、社会福祉協議会の臨時職員や自治会役員らに障害の程度を書かされたと主張している=大阪市内で2020年7月30日正午、伊藤遥撮影

 知的・精神障害のある男性(当時36歳)が5年前に自殺したのは、社会福祉協議会の臨時職員から障害の程度を書面に書くよう強要されたのが原因だとして、男性の両親が社協に計約2370万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。男性は「おかねのけいさんはできません」などと記しており、両親側は「合理的な配慮を怠った」と訴えている。

 25日に第1回口頭弁論があり、社協側は争う姿勢を示した。

 訴状などによると、男性は2019年11月、当時住んでいた大阪市平野区の市営住宅で自治会の班長を選ぶ際、自治会の役員2人や地元社協の臨時職員がいる前で、便箋2枚に「しょうがいか(が)あります」「ごみのぶんべつができません」などと手書きしていた。

 両親が自治会と役員らに賠償を求めた訴訟が別にあり、大阪地裁判決(22年3月)が「プライバシー権や人格権を侵害した」として計44万円の支払いを命じた。一方で、自殺との因果関係を否定しており、この判断が最高裁で確定した。

 今回の訴えによると、1人暮らしの男性は障害を理由に班長の選考から外すよう役員らに求めたが、聞き入れられなかったことから臨時職員に相談。この職員を交えて役員2人と話し合った際、他の住民の理解を得る必要があるとして、障害の程度や日常生活への影響などを書面に記すよう求められた。記載した翌日に自宅で命を絶った。

 両親の代理人弁護士によると、以前の訴訟が進行している最中に男性が残した遺書が見つかった。「ボールペンを無理やりもたされて障害のことかかされた」「さらしものにされて生きていけない あんな紙書かされたら自殺するしかない」と記されていたという。

 両親側は、臨時職員が男性から相談を受け、役員と協議することを約束していたと主張。書面を書かせたのは社協の職員として障害者差別解消法が求める配慮を怠っていたとし、「福祉の専門家であり、相談を受けていたのであれば男性の自殺も予測できた」と訴えている。

 これに対し、社協側は「自治会とのトラブルで相談者の代理人として交渉し、その意向を実現することまでは業務に含まれない」と反論している。【土田暁彦】

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