広島市中区の平和記念公園に立っている被爆樹木アオギリの近くに、その歴史などが書かれた説明板が設置されている。24日午前、被爆で傷付いたアオギリを見上げた親子連れが、説明板についているボタンを押した。本来は「アオギリのうた」が流れるはずだが、反応しないことに首をかしげた。
その後、連絡を受けた広島市緑政課が確認したところ、壊れていることが判明。「故障中」という表示がつけられた。公園内で活動するガイドによると、最近訪れた人から「曲が流れない」という話を聞いていたという。
同公園のアオギリを巡っては今月中旬、2本あるうちの1本の葉っぱが所々、黄色く変色していることも判明。すぐ西隣に今年5月にできた「G7広島サミット記念館」の白っぽい壁に光が反射し、生育環境が乱れたことが原因とみられる。市は、アオギリに面した壁に黒い遮光ネットを取り付けたばかりだった。
アオギリは、爆心地から約1・3キロ地点で熱線と爆風を受け、幹は爆心側の半分をえぐられた。しかし翌春から芽吹き、1973年に公園内に移植された。被爆者の沼田鈴子さん(11年に87歳で死去)が長年、木の下で証言活動を続けたことで知られ、市内に159本ある被爆樹木の中でも象徴的な存在だ。
「アオギリのうた」は、2000~01年に広島市が取り組んだ「広島の歌」の事業で、応募のあった915点からグランプリに選ばれた。当時、小学3年だった森光七彩さんが作詞・作曲。歌詞には「遠いむかしのできごとを わすれずに思うアオギリのうた これから生まれてゆく広島を大切に」という一節があり、市内の学校や平和イベントの会場でよく歌われている。
広島市緑政課は「いつ故障したかは分からないが、業者に修理を依頼している」と説明。平和記念公園などで平和学習ガイドをしている藤川晴美さん(69)は「市はサミット記念館を建てることに気を取られ、アオギリや説明板を大切にしていないのではないか」と話した。【矢追健介】
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