厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 厚生労働省は、子どものいない20~50代の男女が遺族厚生年金を受け取る場合、5年間の有期給付に見直す調整に入った。現在は、配偶者を亡くした妻は30歳以降は無期給付だが、夫は55歳にならないと受給権がなく、男女間の格差を是正する必要があった。ただ、現在受給している人が不利益を被らないよう数十年かけて是正する見通し。来年の通常国会に提出を目指す公的年金制度の改正法案に盛り込む方針だ。

 遺族年金のうち遺族基礎年金は、子(18歳未満、以下同)がいる場合は、母子家庭にも父子家庭にも支給される。遺族厚生年金も、子がいる場合は、子に支給されるため、事実上男女差はない。だが、子がいない現役世帯には男女差が残ってきた。

 子どもがいない場合、30歳未満の妻は5年間の有期給付だが、この対象年齢を段階的に引き上げる方向だ。夫は現行では55歳で受給権が発生し60歳から支給されるが、新たに20~50代での有期給付を検討する。

 現行制度は専業主婦を念頭に「家計を支える夫を亡くした妻の所得保障」という考えに基づくが、共働き世帯の増加や男女の賃金格差の縮小傾向を踏まえ、「生活再建を支える一時的給付」という方向で制度設計を見直す。

 妻にとっては現行の無期給付と比べれば受給期間は短くなるため、年収要件(850万円未満)を撤廃するなど配慮措置を検討する。30日の社会保障審議会年金部会で方向性の案を示し、詳細は年末の関連法案作成に向けて詰める方針。【宇多川はるか】

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