広島市中区の平和記念公園に設置された「G7広島サミット記念館」のすぐ隣に立つ被爆樹木アオギリの葉が変色している問題で、記念館の建設に反対してきた市民団体は23日、広島市に対し原因究明や記念館の撤去を求めた。5月にオープンした記念館の白い壁に日光が反射して、アオギリに影響を与えている可能性があると樹木医は指摘している。
アオギリは、被爆者の沼田鈴子さん(11年に87歳で死去)が長年、木の下で証言活動を続けたことで知られ、市内に159本ある被爆樹木の中でも象徴的な存在だ。22歳の時に広島で被爆して左足を失い、婚約者が戦死した沼田さんに生きる勇気を与えたのが、爆心地から約1・3キロ地点で熱線と爆風を受け、幹を半分えぐられながらも新芽を吹くアオギリの姿だった。1973年に公園内に移植され、現在2本残っている。
広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)など複数の団体でつくる「G7広島サミットを考えるヒロシマ市民の会」はこの日、広島市秘書課の担当者に、木が弱らないようにする措置や原因の究明、記念館の撤去などを求めた。佐久間理事長は「被爆から75年は草木も生えないと言われた中で芽生えた被爆樹木は、被爆者にとって励みで、生きるエネルギーを得られる存在だ」と訴えた。広島市の文化の未来を考える教職員の会の藤川晴美代表は「国際平和文化都市の広島がこんなことをしていていいのか」と嘆いた。
市秘書課は24日、日光の反射を抑えるため黒い幕をアオギリに面した記念館の壁面に設置した。【矢追健介】
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