工房の移転先となる予定の老舗呉服店旧店舗=山形県新庄市で2024年3月12日午前10時55分、長南里香撮影

 山形県新庄市の無形民俗文化財「新庄亀綾織(かめあやおり)」を伝承する協会が、商店街の一角に工房を移転しようとクラウドファンディング(CF)で寄付を募っている。高度な手織りの技術でなければ再現できない緻密で柔らかな絹織物の魅力を、広く知ってもらう場にするとともに、織り手の作業環境を整えるのが目的。年内の工房オープンを目指す。

 新庄亀綾織は江戸時代後期、新庄藩主が上州(群馬県)方面から織師を招き、藩の特産として絹織物を開発したのが始まり。戊辰戦争で用具を焼失し途絶えて以降は、何度も再興と衰退の歴史を繰り返し、やがて「幻の織物」と呼ばれた。

織りの復元に使われた明治時代の商家の資料=山形県新庄市で2024年4月16日午後1時28分、長南里香撮影

 1985年に設立された新庄亀綾織伝承協会が中心になり、特産として復活させようと復元に着手。商家に残る資料などから約30種の織り方が解明された。和服の専門学校を卒業するなどした地域おこし協力隊員を織り手に迎え、現在は20~40代の県外出身者3人が反物などの生産に取り組んでいる。

 工房の移転先は10年創業の老舗呉服店「三吉屋(みよしや)本店」の旧店舗となる予定で、現在入居している市エコロジーガーデンより広く、作業に専念できる時間も融通が利く。熟練した職人でも1日に織り進めるのは幅41センチの反物で長さ10センチとされ、根気と集中力を要する。同協会の宮本麻衣さん(23)は「時間を気にせず集中できるのは助かる」。沓沢伸印千(しんいち)会長は「二度と途絶えさせないように、織り手を育成できる環境をしっかり整えたい」と話している。

亀綾織の織り手=山形県新庄市で2023年5月26日午前10時16分、長南里香撮影

 CFの目標額は280万円。返礼品として織りの体験や財布などの雑貨を用意し、これまで約50万円が寄せられた。

 期間は6月7日まで。専用サイト(https://camp-fire.jp/projects/view/723683)から寄付できる。【長南里香】

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