高知県立牧野植物園(高知市)が、環境省レッドリストで絶滅の危険が極めて高い「絶滅危惧ⅠA類」に分類されている食虫植物「ムジナモ」を公開している。同園では初めて発芽に成功した“赤ちゃんムジナモ”も一緒にお披露目している。
ムジナモは、湖や沼などで水中に浮遊する長さ20センチ程度の植物。2枚貝のような葉は刺激を感じると閉じ、ミジンコやボウフラを捕まえて栄養にする。夏場の1~2時間しか開花せず、生態も不明な点が多いため「幻の花」と言われている。
同園は2008年からムジナモの栽培を試行し、15年に初めて開花に成功。昨年は54株の開花を確認した。果実から種子(直径約1ミリ)約150粒を取り出して複数の条件で栽培したところ、24年4月下旬、発芽を確認した。同園によると、種子からの発芽は、国内では「羽生市ムジナモ保存会」(埼玉県)が19年に成功したのに続き2例目という。現在までに約30株が発芽し、長さ1センチ程度に成長している。
ムジナモは、高知出身の植物学者・牧野富太郎博士が1890年に国内で初めて発見し、ムジナのしっぽのような姿から「ムジナモ」という和名を付けた。牧野博士は花や種子も克明な絵に残しているが、発芽の様子は確認していなかったとみられる。
栽培を担当した同園温室管理班の丹羽誠一班長(53)は「ムジナモについては分からないことが多いため、栽培には苦労した。希少な植物なので絶やさないよう、今後も慎重に栽培したい」と話す。
同園では「食虫植物展」を開催中で、ムジナモの他、「落とし穴」のように虫を捕まえるウツボカヅラや虫を挟み込むハエトリグサなどの珍しい植物を展示している。9月1日まで。開園は午前9時~午後5時。入園料一般730円(高校生以下無料)。【小林理】
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