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 若者が街へ繰り出す夏休みを前に、大手芸能事務所のアミューズが注意喚起を行った。「学生・生徒の皆様の夏休みが近付いたこの時期に、注意喚起します。当社(アミューズ)社員や当社の関係者だとウソをつくスカウトの通報が増えています。いわゆる『にせものスカウト』『なりすましスカウト』です。被害に遭われませんように十分にお気を付けください」

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 「スカウト」は芸能人やモデルになるきっかけとなり、人生のサクセスストーリーを始めてくれる存在にもなりうるが、中には偽者もいる。若者が狙われるケースが多く、国民生活センターに相談する被害者の3人に2人は20代以下とのデータもある。SNSでは「登録料とレッスン料で30万円を支払ったが、結局レッスンもなかった」「契約から8日以上経ち、クーリングオフできなかった」「スカウトのDMが来た。登録料で100万円振り込めばいいらしい」といった声も。偽スカウトにだまされないには、どうすればいいのか。『ABEMA Prime』では当事者とともに考えた。

■夏休みに増える偽スカウト、最新の手口は

 芸能界における法律問題に詳しい河西邦剛弁護士は、狙われるのは圧倒的に女性が多いと語る。18歳〜20代が中心で、成人年齢引き下げにより18〜19歳にも被害が出ている。夏休みに東京に遊びに来た人など、上京者が中心で、事務所に所属=芸能人になれるという心理につけ込む。

 狙われやすい人は「テレビ出演に強い興味を持つ人」だ。「知識がないと『芸能事務所に所属する=テレビに出られる』と思って契約してしまう」。最近ではSNSのDMでスカウトするケースも増えている。「DMでたくさん声をかけていき、反応があった人と直接会い、有料レッスンを持ちかける」などがある。

 ササキさんは、大学2〜3年生のころ、「にせものスカウト」の被害にあった。「表参道を歩いていたら、20代後半ぐらいのイケメンから声をかけられた。周囲にも読者モデルやテレビで活躍する友人がいて、いいなと感じていた」。上京後初めての経験で「疑いもせず、純粋にうれしかった」。スカウトに高級喫茶店へと連れられて、所属タレントの写真を見ながら「こんなに活躍している」と説明を受けた。

 一通りの説明を終えると、スカウトは「レッスンや美容が必要」と語り、レッスン料が100万円かかると伝えられた。「金額だけ見ると大きかったが、『この子は半年でこれくらい稼いだ』と言われると、自分も投資すれば、半年や1年で回収できると思った」そうだ。

 成人していたこともあり、ササキさんは契約をその場で決めた。「就活に悩んでいた時期で、新しい道を決断するしかないと思った。友達が少なく、田舎から来たこともあるだろう。当時は気持ちが高揚していて、名刺の住所などを調べることはなかった」。見せられたタレントの写真はウソ。「みんなが知っている有名人だが、所属事務所は違った」と騙されたという。

 レッスン料のうち70万円を消費者金融で工面し、いざ初レッスンに向かうものの「『10日後にここに来て』と言われ指定された雑居ビルへ行くと、全然違う会社が入っていて、連絡も取れなくなった。いま考えると、クーリングオフの期間も過ぎていた」と騙されたことに気づいた。

■騙されたとわかっても言い出せないケースも

 河西弁護士によると、芸能界への興味がありそうな人にDMを送る「SNSスカウト」も急増している。企業側からすれば、安価な大量送付によりコスパがよい方法だ。ライバー・インフルエンサー・ユーチューバーなど、多様な活躍の場が与えられる可能性もあるが、(高額な)レッスン料を取られたり、企業の商品紹介と言われても支払いがなかったりなどの被害がある。

 加えて「オーディション商法」の存在もある。合格させて「レッスン料」「登録料」などの名目で金銭を要求する詐欺的手法で、基本的に全員が合格するも、ほとんど仕事がもらえないため、消費者庁などが注意喚起している。

 ササキさんは「警察に相談したが、訴えると親を巻き込む事になるため、詐欺として立件せずに、“勉強代”として諦めた」と語る。その背景には「恥ずかしさ」もあった。「2年ほど東京にいるのに、キラキラする友人に憧れて、簡単にだまされてしまった。就活も控えていて、影響が出るのではと思うと、あまり大ごとにしたくなかった」と、相談もしなかった。

 河西弁護士は、ササキさんのケースを「レッスンの実態がなく、詐欺に該当する可能性が非常に高い。レッスンを受けても売れなかった場合の“詐欺まがい”的な事案とは異なる」と解説する。「登記を取れば、簡単に会社の存在を調べられる。事務所の実績をネットで調べて、プロデュースの成功例がなければ危ない」。実績ある事務所を騙った場合はどうか。「事務所へ行って、裏付けを取ることが必要。事務所以外の場所で契約書を作ろうとするパターンが多い。実態がない事務所は、金銭負担が結構ある」と紹介した。

■カンニング竹山「事務所は簡単に契約を結ばない。事務所にとっても損失だから」

 カンニング竹山は「芸能事務所は、一般企業と違って、内部に入らないとよくわからないことが、詐欺の温床になっている」と分析する。「レッスン料を取るところはあるが、一気に何百万円を払わせることは、ほとんどない。また、簡単に契約を結ばない。売れるか分からないレッスン生と契約を結ぶと、事務所にとっても損失だから」と、事務所側から見た“契約”も、簡単なものではないとした。

 河西弁護士は「登録料やレッスン料を支払わせるのは、事務所資本で育てようという感覚が薄いことを指す」と読み解く。「とはいえ『多少払っても、チャンスをつかみたい人』の気持ちもある。ポイントになるのは料金で、30〜40万円を超えると怪しい感覚。契約期間も長くなると、ずっと支払わせるつもりなのかと感じさせる」と、注意喚起した。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、河西弁護士の説明を受けて、「吉本興業のNSC(吉本総合芸能学院)は、登録・レッスン料が30万円を超えている」と指摘する。「30〜40万円が絶対にアウトかと言えば、吉本のような場合もある。大手事務所のダンススクールも、毎月3万円で、年間30万円といったケースはある」。すると竹山は「システムとして、やっているところはある」と認めつつ、「はじめに見学の機会を設けるなど、本当の事務所はケアをしているのではないか」と語った。

 元乃木坂46でタレントの山崎怜奈は、「スカウトで才能を発掘しようとする事務所は、詐欺加害者によって、知らぬ間に信用を損なわれているかもしれない」との見方を示す。「アミューズのように声明を出さないと、信用が勝手に失われてしまう。なぜ他社も出さないのか」。その上で詐欺の防止策を示す。「名刺にはマネージャーなどの連絡先が書いてあるが、直接やりとりするのではなく、事務所自体に電話をかけるのが確実」と、特定人物だけとやりとりする危険性を訴えた。

 元SKE48でフリーアナウンサーの柴田阿弥は、「まともな事務所なら、その場で契約しろとは言わないだろう」と推測する。「『持ち帰る』と言ってキレる人は、本当にマネージャーだとしても、やめた方がいい。一度持ち帰って検討するしかない」と述べた。

■芸能事務所が儲かる「学校&レッスン」

 河西弁護士は「例えば10人がレッスンを受けたら、そのうち1、2人は成功するケースもある。だから、一度の人生を100万円かけてチャレンジしたい思いはある」と考察する。「レッスンは集団でやるため、人数が集まるほどコスパがよくなる。人を集めつつ、売れる人は少ないのが実態だ」と、レッスンが“おいしい事業”だと説いた。

 ササキさんのような詐欺は別として、詐欺まがいの行為は「何十年も続いている事務所」でも起こりうる。「クレームが来るが、なりたい人が集まるので、登録料を取って回し続けている。行政の監督対象外で、許可制や免許制ではないため、指導は入らない」と、取り締まりも難しいという。

 詐欺の温床になろうとも、芸能人の育成ビジネスが続いている理由を、竹山が説明する。「事務所にとって一番のドル箱は、人数が集まる学校とレッスン。儲かる上に、そこからスターになる人もいる」と見極めの難しさも口にしていた。
(『ABEMA Prime』より)

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