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 去年、北海道で大量発生して漁師を困らせていたオオズワイガニが、今年も大量に水揚げされているという。今年はオオズワイガニを活用しようとする新たな取り組みが進んでいる。

■水揚げの6割以上がオオズワイガニ

毛ガニかご漁 この記事の写真

 今月6日、北海道南部の八雲漁港で水揚げされたのは大量のカニ。八雲町では先月20日から「毛ガニかご漁」の漁期。毛ガニを狙っていたはずが、カゴを上げてみると、入っていたのは「オオズワイガニ」ばかり。

 毛ガニはキロ単価4000円〜9000円の高級品だが、オオズワイガニは販路が確立されていないため、市場価格でのキロ単価はわずか10円〜50円程度。同じカニでも売り上げに大きな差が出てしまう。

八雲町の漁師
「(オオズワイガニは)昔はそんなにとれなかった。去年・今年と大量にとれてしまって結構、迷惑なカニ」
「毛ガニがとりたいので、(オオ)ズワイガニをとりたいわけじゃない。燃料代も餌(えさ)代もいろいろ経費がかかってきますので、だいたい(マイナス)200万円ぐらい」 水揚げの6割以上がオオズワイガニ

 八雲町漁協によると、「毛ガニかご漁」の今季の水揚げはおよそ5.6トン。そのうち6割以上がオオズワイガニで大きな損害になったという。

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■去年はカレイやボタンエビ、ツブ貝が大打撃

■去年はカレイやボタンエビ、ツブ貝が大打撃

 実は、オオズワイガニは去年、北海道の日高地方から噴火湾にかけて突如として大量発生し、問題となっていた。

 北海道南西部に位置する様似町ではオオズワイガニの影響で、カレイの水揚げ量が例年の半分以下に落ち込むという深刻な事態になった。

カレイ漁の刺し網に穴が… 様似町の漁師
「(網が)こういうふうになって切れちゃうんだ。穴が開いてるでしょ。かじるのさ、網を」

 カレイ漁の刺し網をカニが破ってしまい、漁ができない状態になったという。

大打撃

 お隣のえりも町では例年、春からボタンエビやツブ貝を狙った「かご漁」が行われていたが、去年の春からオオズワイガニばかりがとれ始め、肝心のボタンエビの水揚げが半減した。

毒性のあるプランクトンが急増し…

 この大量発生のワケは、海水温の上昇により毒性のあるプランクトンが急増し、天敵のタコが他の海域に移動。その影響でオオズワイガニが大量発生したとされる。

激安価格

 大量にとれても知名度がなく、販路が確立されていないオオズワイガニは、直売店では激安価格で販売されている。こうして売り物になればまだましだが、小さすぎて売り物にならず廃棄されるものもある。

様似町の漁師
「カニに追われた夢を見ている。なんとかしないと、みんな漁師を辞めないといけない。金になるならいいけど、何にもならないし」

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■厄介者から名産に 即売会では都度完売

■厄介者から名産に 即売会では都度完売

 あれから1年…。厄介者だったオオズワイガニに対する風向きが変わったという。

去年の一番小さい時は1匹100円だったが えりも漁協 金子武彦参事
「(去年)一番小さい時には1匹100円とか150円で売っていたんですが、今現在は1匹700円、生で700円で売っています」

 去年に比べ、カニが成長したことでサイズが大きくなり、高く売れるようになったオオズワイガニ。漁業の新たな主役として、期待する声が上がり始めた。

即売会では都度完売

 今年大量発生した八雲町では、メディアに取り上げられたことがきっかけで、お手頃価格で手に入るカニということで人気に。即売会を行うと道内各地から客が集まり、その都度完売している。

札幌から来た客
「5袋買いました。まずこれだけ買ってどうしようかなって考えているところです」
「(Q.どうやって食べたい?)しゃぶしゃぶ」

 もともと味には定評があるというオオズワイガニ。地元の名産品にしようという取り組みもある。

オオズワイガニを使ったメニューを開発

 北海道森町のすし店ではオオズワイガニを使ったメニューを開発し、カニ味噌に内子や外子と呼ばれる卵巣を混ぜた一品もある。

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■サケ激減の一方…ブリの水揚げ30倍

■サケ激減の一方…ブリの水揚げ30倍

サケの漁獲数が激減

 北海道の海の異変はオオズワイガニだけではない。北海道を代表する魚といえば「サケ」なのだが、収益の柱だったサケの漁獲数が激減。

漁師
「サケは全くダメです。10本…10本くらいじゃないですか」 ブリの水揚げ30倍

 サケが減ってしまった一方で、増え始めているのが「ブリ」だ。

 日本近海の海水温が上昇したため、暖流に乗ったブリが北海道まで北上してきたという。北海道全体でブリの水揚げはここ20年で20倍〜30倍に増え、去年は全国で一番の漁獲量となった。しかし…。

函館朝市協同組合連合会 藤田公人理事長
「(ブリを)食べるという習慣がほとんどないので売れないよ」 函館市民
「ブリは好みではない。身はかため、味も特に。おいしい魚ってあまり思わない」
「(ブリが)なくても生きていける。サケは困るけど。(ブリとサケが)2つ並んでいたら、サケ買うよね」

 北海道の人々にとってブリはなじみが薄く、1キロあたりの値段はサケの半値以下になってしまうこともある。

サケの水揚げは… 漁師
「サケは全くダメです。昔だったら、サケ何千本とか入っていたけれど、ここ3年ぐらいは全くダメですね。良い年はサケで1億円(分)とったことがあるから。それから見たら、水揚げはかなり落ちている」

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■白糠町の「極寒ブリ」 ブランド化で攻勢

■白糠町の「極寒ブリ」 ブランド化で攻勢

 こうしたなか、たくさんとれるようになったブリに力を入れ始めた町があった。

 サケが減り、ここ10年間でブリの水揚げが急増した北海道白糠町。丸々と太ったブリで足元が埋め尽くされるほどの大漁ぶりで、船上のベテラン漁師たちも手を焼く活きの良さだ。

主軸だったサケが極端に減少

 ブリが大量にとれるようになった半面、主軸だったサケが極端に減少したことで漁業関係者は頭を抱えていたのだが、こうした事態を打開するべく新たな取り組みが行われた。

地元の男性
「初めて食べました。酒のお供に最高です」 極寒ブリ

 白糠町では去年からブリをふるさと納税の返礼品にするなど、町を挙げてブランド化して売り出すことにした。その名も「極寒ブリ」。

極寒ブリの特徴

 「極寒ブリ」は北海道の水温が低い海域でとれるため、身が引き締まり脂ノリがよく上品な味わいだという。また船上で活け締めするためクサミがなく、切り身には透明感がある。

白糠町 棚野孝夫町長
「極寒ブリを白糠の将来に向けてブランド化した。自慢の一品にして消費者の皆さんにお届けするように頑張りたい」

 さらに白糠町では去年、1億円をかけたブリ専門の水産加工場が完成。現在も天然ブリの鮮度を長期的に保てる「畜養施設」が作られるなど、極寒ブリのブランド化がどんどん進められている。

 こうした動きに、地元の漁師からもこのような声が聞かれた。

漁師「いけそうな手ごたえある」 白糠町の漁師 木村太朗さん
「ブリにかける思いというか期待している思いは非常に強いです。魚の単価の上昇にもつながっている。いけそうな手ごたえはありますね。うまくいくように私たちがしていかないと」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年7月19日放送分より)

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