36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件の発生から5年を迎えた18日、事件が起きた第1スタジオ(京都市伏見区)の跡地では追悼式が営まれた。従業員が弔辞を読み上げ、犠牲者を悼むとともに、「ものづくりに真剣に向き合うことが弔いになると信じている」と述べた。
弔辞全文は次の通り。
◇
第1スタジオがあったこの場所に来ると、建物が失われたことで、ここから見える空は広く、大きく開けて見えます。
それがとても空虚に感じられ、同時に心に空いた大きな穴を実感させるのです。5年経(た)った今でも、大切な仲間を亡くしたという喪失感が、変わらず胸のうちにあります。
第1スタジオは私が入社して初めて席を置いたスタジオでありました。
身を寄せ合うようにして置かれた机は、仲間との距離を近くし、結束を築き上げる助けになっていたように思います。
「寄ってたかって作る」を形にしたかのようなスタジオでした。
その後のスタジオ移動やスタジオ分散は何度もありましたが、たくさんの思い出が育まれた制作現場でもありました。アニメーターとして生きる自分の原点がここで築かれたのだと感じます。
この場所でたくさんの作品を生み出してきましたね。
皆と過ごしたものづくりの日々は今でも色褪(あ)せることはありません。
ここに根差した思い出がたくさんあるほどに、失われたことの悲しみを、感じずにはいられないのです。
この5年間、私たちは真摯(しんし)にものづくりに打ち込んできました。
多くの仲間を亡くし、それでも作品作りを続けるのは、それによってたくさんの人に喜びや感動を届けること。そう志して集まった皆のことを思えばこそ、ものづくりに真剣に向き合うことが私たちなりの弔いになると信じているからです。
世界中にファンの方がいて応援の言葉をくださいました。
たくさんの人が励ましの気持ちを送ってくださるのを見て、これまでのものづくりや作品が、本当に多くの人に届いていたのだと実感すると共に、作品を通して皆の想(おも)いが息づいているのを感じました。応援の言葉ひとつひとつの中に、作品に関わった一人ひとりの存在が感じられるようで、有難(ありがた)く、救われる思いでした。
これからも私たちは作品を作り続け、「志」を未来へ繋(つな)いでいきます。
悲しみは変わらず胸のうちにあり、時間によって傷が癒えることがなくとも、作品を作り続ける限り、作品に込められた想いや志もまた、未来へ届き続けるのだと信じています。
皆との思い出はもう増えることがありません。
それが本当に寂しいです。
どうか、正々堂々とものづくりに臨む私たちの姿を、これからも見守っていてください。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。