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 「親を言いなりにして支配しようとする『毒子』が増えている」。 長年、親子関係について、カウンセリングを行ってきた専門家は、そう指摘する。北海道ススキノで起きた30代女性による殺人事件でも、両親が娘の言いなりとなり、犯行を手伝った容疑がかけられている。

【映像】“毒子だった”と自覚するユウジさんが、10代の頃に親を黙らすため破壊した壁

 暴力や過保護、過干渉などによって、親が子どもを支配する「毒親」に対して、反対の「毒子」。親の弱みにつけ込むような形で支配する子のことだが、一体いつなってしまうのか。『ABEMA Prime』では当事者とともに、実態と背景を考えた。

■「毒子だった」自覚する当事者「普段から親の心情を逆なでしていた」

 30代のユウジさんは、自分が毒子だったと自覚している。10代の頃は、親から注意を受けると、殴りかかる・物を壊す・罵声といった反応を示し、その度に親は萎縮した。また、学校へ車で送り迎えしてくれないと、あえて不機嫌になるなどの行動も取った。20代では、就職活動がうまくいかず親から心配されたが、親への態度を強めることで、何も言ってこなくなったという。

 ユウジさんは「暴力やバイオレンスな行為で、親に自分の要望を強く訴えかけ、無理やり実現していった」といい、「親への罪悪感はありながら、一貫して続ける中で、ループから抜け出せなくなり、自分でも『そういう子どもになったのかな』と認識した。普段から親が気にしていることを逆手にとって、心情を逆なでしていた」と振り返る。

 ユウジさんの家庭は、公務員の父親が厳格なタイプで、世間体を気にして躾が厳しかった。専業主婦・パートの母親は、過保護な所があり、先回りしてお世話にしてくれていた。そして姉と妹は、暴れるたびに止めてくれた。自身は20代後半から仕事が安定して、結婚を経た今では、親と良好な関係になっている。

「20代後半になり、親を尊重する気持ちの余裕ができてきた。言葉でコミュニケーションを取り、問題を解決していく中で、互いの気持ちがスッキリした」

■「まだ自分たちでどうにか…」毒子に悩まされる親の思いは

 60代のサトウさんは反対に、「娘からの言いなりになっているのでは」と悩んでいる。20代後半で、シングルマザーの娘は、週の半分近く、孫を実家に預けて外出するが、その理由を詳しく教えてくれない。アパート代・生活費など金銭面の援助も求められるが、こちらから「正社員で働いて欲しい」や「実家に帰ってきてほしい」と伝えても、受け入れてもらえない。

 サトウさんは、そんな現状にストレスをためているが、「自立してほしいと思いながらも、孫もかわいく、(現状を)受け入れてしまう」と話す。専門家や行政への相談は考えず、「まだ自分たちでどうにかできると思っている」状態。また「10代の頃はそこまで困らせられたり、無理を言われたりした記憶はない」と振り返った。

■「いい子→毒子」のケースも…家族はどう向き合う?

 毒子が親に要求する内容としては、「モノ買って!」と何でもかんでも親に買わせるかと思えば、「買い物行ってきて!」と言いつつも、気に入らないと返品し、また買いに行かせるケースもある。「家事して!」と、料理や掃除を任せて、座っているだけでご飯が運ばれ、食べ終わったら片付けてくれるよう強いるほか、「お金ほしい!」と年金や老後資金まで無心してくることもある。

 毒子とその親子関係について詳しい心理カウンセラーの江崎英子氏は、毒子が生まれやすい家庭の特徴として、「親の都合で子どもへの対応が変わる」「親に自分の意見や自信がない」「親の言動が一致しない」「裕福な家庭で、何でも買い与える」「頼れる人がいない(ワンオペなど)」といった項目を挙げる。

 突然「いい子」から毒子になるケースも多々あり、「今まで甘えられなかった子が、社会に出たり、子育てをしたりして、人間関係に迷ってもぶつける先がなく、一番身近な親にぶつけてしまう。現状がもっと悪くなるのではとの不安や恐れ、自信のなさから思い込むこともある」と説明。

 また、親が要求を受け入れる線引きや断り方は「要求される物事は関係なく、子どもの要求を受け入れることに、自分は満足しているか・不満を抱いていないかが大事だ」とした上で、「状況説明だけで断わるのではなく、自分の気持ちを相手に伝えるべき」と話す。

 多様性が尊重される時代ゆえの課題もあり、江崎氏は「各々が大切にしていることを認め合うのと、なんでもありの自由はぜんぜん違う。相手の思いを理解しながら、尊重し合うことが大切。手っ取り早く子育てできればいいわけではない」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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