兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題に関連し、片山安孝副知事は12日、7月末で辞職する意向を示した。文書を作成した元県西播磨県民局長の男性(60)が死亡するなど、県政の混乱に対する引責で同日、辞表を提出。記者会見で「計5回、知事に『進退をお考えになりませんか』と進言した」と明かした。斎藤知事の右腕的存在の副知事の辞職により、知事の進退にも影響する可能性がある。
50人以上の報道陣が詰めかけた会見で、片山副知事は「知事を支えきれなかった」と涙を見せた。
「昨日、知事に副知事を辞めたいとお伝えした」。会見でこう切り出し「県政の停滞や混乱を招いた。責任を重く受け止めた」と語った。6月上旬から辞職するか悩んでいたが、元局長が死亡したことも決断した理由の一つとし「政治家の進退は本人が決める。知事の代わりに辞めるのではない」と強調。6月中から知事に「一緒に辞職する考えはありませんか」と問い続け、5回目となる進言は辞職の意思を伝えた11日だった。知事は「選挙で負託を得た身なので任期を全うしたい」と断ったという。
知事から「任期いっぱいまで一緒に仕事をしたい」と慰留されたことを明かし、「なんで知事を支えられなかったのか、悔しくて仕方ない。自分の能力がなかった」とハンカチで目頭を押さえた。「知事も辞職すべきでは」との質問が相次いだが「知事の判断を尊重したい」と繰り返した。
一方で、県職員や県議らに対する知事のコミュニケーション能力には課題があったとし「もっと私が間に入るべきだった」と述べた。文書について内部調査を始める3月の時点で、知事がその内容を「うそ八百」と決めつけたことについては「違和感があった」と苦言を呈した。
県職員時代に同僚だった元局長が亡くなったことについて問われると、「心からお見舞い申し上げる。亡くなったのは痛恨の極みだ」と立ち上がって頭を下げた。ただ、公益通報制度に基づく調査結果を待たずに内部調査の結果を公表し、停職3カ月の懲戒処分を下した過程については「今でも適切だったと思っている」と断言した。
文書では、知事の政治資金パーティー券を商工会議所に圧力をかけて大量に購入させたなど、副知事自身も三つの疑惑への関与を指摘された。これに対し「パーティー券の販売を手伝ったが、法的に問題はない」などと改めて否定。県議会調査特別委員会(百条委)から出頭要請があれば、応じる姿勢を示した。
片山氏は産業労働部長などを経て、斎藤知事が就任した翌月の2021年9月から副知事を務めていた。
元局長は19日の百条委に証人として出席する予定だったが、7日に同県姫路市の親族宅で死亡しているのが見つかった。自殺とみられる。県職員の間に動揺が広がり、知事や県幹部への批判が強まっていた。【中尾卓英、山田麻未】
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