祖先の霊を迎え、供養する「お盆」。東京などでは一足早く、13日にやって来る。スーパーやホームセンターにはナス、キュウリ、おがらなどがパックされた「お盆セット」が売っている。そういえば、お盆ってなんだっけ――。ふと気になった。
7月は少数派?
生花販売を手がける日比谷花壇(東京都港区)によると、全国的には8月13~16日をお盆とする地域が多いが、東京都の多摩地区を除く地域と、北海道函館市、金沢市の旧市街などでは7月13~16日がお盆だ。
この「お盆」、起源は古い。奈良文化財研究所飛鳥資料館(奈良県明日香村)によると、お盆の元となったのは旧暦7月15日に執り行われる仏教行事の盂蘭盆会(うらぼんえ)だ。
5世紀ごろに中国で書かれたとされる「盂蘭盆経」で、僧の目連(もくれん)が餓鬼道に落ちた母を救うため高僧たちに飲食を提供したという説話に由来し、6世紀には祖先の霊を救う行事として執り行われたという。
日本では奈良・飛鳥に都が置かれていた推古天皇の時代の606年、寺ごとに盂蘭盆会の儀式を行ったことが日本書紀に記されている。石橋茂登・学芸室長は「古墳時代から祖先の供養はあったが、『お盆』はここから始まったと言えるのでは」と指摘する。
対応分かれた「改暦」
お盆の時期が地域によって異なるのは、明治時代に入って太陰暦(旧暦)から太陽暦(新暦)に改暦されたからだ。
この際、東京など一部地域では旧暦の7月から新暦の7月に行事を移した。しかし、多くの地域では従来通りの時期に当たる新暦の8月に残した。沖縄では今も旧暦で行うため毎年日付が変わる。
対応が分かれた理由は、諸説ある。地元の神社の祭礼と重なるのを嫌った、農村部の繁忙期で仏事が後回しになった――などの事情があったという。
近年、墓じまいや葬儀の簡略化が進むが、先祖や故人をしのぶ人々の思いが途絶えることはない。この夏、弔いの歴史や地域ごとの違いについて改めて考えるのもいいかもしれない。【山崎明子】
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