マルチ組織は業務禁止命令を逃れようと新会社を作っていた

 東京都の行政処分を受けながら悪質な連鎖販売取引(マルチ商法)を繰り返した疑いで、マルチ組織の幹部4人が警視庁に逮捕された。毎日新聞は、このマルチ組織が処分を逃れようと次々に新会社を作って活動を続けていた実態を、2023年12月の連載「変幻マルチ」で詳報した。

 新会社の一つが、森田帆南容疑者(28)が代表を務めるモアだ。プレジデント、パイオニア、モノリスが、都から9カ月間の業務停止命令を受けた翌月の23年4月に設立。パイオニアの幹部クラスの会員だった森田容疑者が、代表に登用された。

 毎日新聞は、命令が出る前日に撮影されたパイオニアのビジネススクールの動画を入手。代表の奥寺大容疑者(28)が、モアを新会社として会員に紹介した上で「会社の内容も知っているし、安心して任せられる」と、森田容疑者を「後継指名」していた。

 命令期間中だった23年9月、この組織が都内のカフェを拠点にして悪質な勧誘を続けていたことも現地で取材。組織のリーダー格であるプレジデント代表(当時)の坂本新容疑者(30)が、森田容疑者と会談したり、会員らに指示を出したりする様子を確認した。

 さらに、3社とモアがそれぞれ会員と交わす契約書は、文章や図がほとんど同じ「コピペ」で、契約金の額もほぼ同じだった。3社とモアは同一のマルチ組織で、モアは事実上の後継だったことが、こうした取材で裏付けられた。

 しかし、たとえ同じ組織でも3社とモアは法人としては異なるため、都の担当者は「両社が同一と判断するのは難しい」と取材に明かした。新会社も行政処分をするために新たに調査をすれば、その間にさらに別の新会社を作って処分を逃れることも可能だ。

 警視庁によると、この組織はモアの他にも「Shine(シャイン)」(東京都新宿区)や、法人の形態を取らずに会員が個人事業主となる「One Hundred(ワンハンドレッド)」などの会社や組織を次々に設立。いずれもモノリスとパイオニアの元会員幹部が運営に関わり、坂本容疑者や大森容疑者が、ワンハンドレッドとモアの合同セミナーで講師を務めていたことも確認されているという。

 悪質商法に詳しい京都産業大の坂東俊矢教授は「マルチ組織は法の抜け穴を突くのがうまい。抜本的な対策が必要だ」と指摘する。【阿部絢美、加藤昌平】

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