自衛官の採用が厳しさを増している。若者募集の大半を占める任期付きの「自衛官候補生」は昨年度、採用計画の達成率が30・3%となり、制度導入以降で最も低かった。人材確保に向けてテコ入れを図ろうと、防衛省は8日、新たな検討委員会を始動。8月中に対策をとりまとめ、来年度予算の概算要求に反映させたい考えだ。
自衛官候補生は2010年度に導入され、採用計画の達成率は22年度に初めて5割を切り、23年度はさらに下回った。部隊の中核を担い、定年まで勤務可能な「一般曹候補生」の達成率も近年は下降傾向となり、昨年度は68・7%にとどまった。採用難は少子化に加え、高校新卒者の有効求人倍率(23年7月末時点)が過去最高の3・52倍となるなど、人材獲得競争の激化が背景とみられる。
防衛省は自衛官の定員割れを防ぐため、さまざまな対策を講じてきた。23年7月に外部有識者がまとめた報告書に基づき、新人の女性自衛官の長髪を容認するなど髪形の基準を緩和。入隊希望者への「奨学金」の拡充なども進めた。だが「これまでの施策が必ずしも十分ではなかった」(木原稔防衛相)との問題意識から、今回新たに「人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会」を設置した。
鬼木誠・副防衛相を委員長とし、「背広組」トップの事務次官や「制服組」トップの統合幕僚長らが委員を務める。処遇面を含む職業の魅力向上▽人工知能(AI)などを活用した省人化・無人化▽OBや民間人材の活用――など幅広く検討していく。
鬼木氏はこの日の初会合で「23年度は自衛隊創設以来、最低レベルの採用計画達成率となった。厳しい状況は24年度以降も続くことが見込まれる」として、活発な議論を呼びかけた。【松浦吉剛】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。