■千葉“海のダイヤ”アワビに異変

 記録的な猛暑は海の幸に大きな影響を与えています。

 千葉県の南東部、外房に位置する「いすみ市」。今、地元の名産が危機的な状況に陥っています。

 ウェットスーツを着た漁師たち。この地で、古くから続く伝統のアワビ漁です。房総半島で行われている素もぐり漁は、海底まで一気に潜り、岩場に潜むアワビを探します。

 「海のダイヤ」とも呼ばれる「クロアワビ」。大きなものは、1個で4万円の値がつく高級食材です。ところが、アワビの漁獲量は以前に比べ、減少しています。

 漁師たちが素潜りで海の中へ。潜ってアワビを探しますが。

アワビ漁師
「潮が速い。これだけで流れて行っちゃう」

 潮の流れが速く、うまく潜ることができません。さらに別の問題も起き、漁師たちは船に戻ります。

齋正忠幸船長
「もやが出て向こうが真っ白」

 水平線がかすむほど大気中に霧がかかっています。船が出る前には水平線や海岸の切り立った崖が見えていましたが、2時間後には辺り一面に海霧がかかります。

齋正忠幸船長
「この時期は結構出る。海水温が低いから」

 海霧は暖かく湿った空気が冷たい海面に接することで生じます。

 アワビを一つも取ることなく漁を中断することに。

 漁師たちは、アワビに代わる海の幸で生計を立てています。

 「アワビの産地」として栄えてきた港町は、今では「イセエビの町」へと変貌を遂げています。

■アワビから「イセエビの町」に変貌

 近年、イセエビが豊漁で豪華絢爛(けんらん)な料理がお得な料金に値下がりしていました。

 千葉県では、6月と7月はイセエビの禁漁期間ですが、いすみ市では春先に大きなイセエビがたくさん取れたことで、仕入れの値段が下がったといいます。

 イセエビづくしの豪華な定食を700円以上、値下げしました。

 最新のデータでは、千葉県はイセエビの漁獲高が1位です。近年では2位の三重県を大きく上回っています。

 ただ、店主は先行きの不安が拭えません。

割烹かねなか 中村一俊店主
「この先どんどん海水温が高くなったら、もしかしたらイセエビが取れなくなる、少なくなることもあるのかなと心配している。実際、三重県では去年おととしは不漁と聞いている」

■海水温上昇でイセエビの生息域に変化?

元水産庁職員 東京海洋大学 上田勝彦客員教授
「昔からの産地が今、変わりつつある。新たな産地ができる兆しがある。一つの要因としては水温が大きな原因となっている」

 これまで取れることのなかった東北の海でも、数年前からイセエビが増加しています。その訳は。

元水産庁職員 東京海洋大学 上田勝彦客員教授
「黒潮がすごく強くなっている傾向があるから、暖かい潮にのってイセエビが北上している。このたび起こっている黒潮の大蛇行はずいぶん期間が長い予測。収束の見込みがない。当分はこの状態のままいくのではないか」

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