旧優生保護法(1948~96年)による強制不妊手術を受けたとして宮城県内の70代と80代の男性2人が国に損害賠償を求めた訴訟は、最高裁が4日付で国の上告を受理しないと決定し、原告の訴えを認めた仙台高裁判決(2023年10月)が確定した。2人は「一刻も早く、被害に対して謝ってほしい」と首相による直接謝罪を求めた。
2人は18年12月に仙台地裁に提訴し、旧法被害をめぐる宮城県内の裁判では第2陣にあたる。最高裁は今月3日、宮城の第1陣訴訟を含む全国の5件について原告全面勝訴の判決を言い渡した。今回の上告不受理はそれを受けたものだ。
5日、仙台市内で会見した原告の一人、千葉広和さん(75)は「長年声を上げてきたことが実り、心からうれしく思います」と述べた。軽度の知的障害がある千葉さんは18歳で理由を告げられず手術を強制された。被害の完全救済に向け「他に手術を受けた人も名乗り出てほしい」と呼びかけた。
もう一人の原告の80代男性は52年ごろ、市内の診療所で手術を強制された。判決確定を受け、「裁判官が自分たちの訴えを聞いてくれるかずっと不安だった。聞いてもらえてうれしい」と喜びを口にした。
今後の救済を巡っては、岸田文雄首相が月内にも被害者と直接面談し謝罪する方向で調整が進むとみられる。全国弁護団は補償について十分な仕組みを整えるよう、国や国会に働きかけていく考えだ。
今回確定した仙台高裁判決は、裁判長を務めた小林久起判事が、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」について「人権侵害を進めた国が除斥を理由に請求権消滅を主張することは権利乱用にあたる」と国の責任を認める画期的な判断を示した。
だが、小林判事は今年4月に急病でこの世を去った。新里宏二弁護団長は「仙台高裁での判決が最高裁を動かしたと思う」と評価。「他の事件でも私たちの声が届くような判断をしてほしかった」と惜しんだ。【遠藤大志】
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