1

 東京都内で飲食店を経営している斎藤光正さん(74)は、今年4月に「がん」を告知された。すでにステージ4の末期で、手術が難しいため、抗がん剤治療を提案されたが断った。抗がん剤治療は、がん細胞の増殖を抑えたり、再発・転移を防いだりする効果が期待されるが、一方で吐き気や倦怠感などの副作用が出ることもある。

【映像】余命2カ月宣告された、がん患者の斎藤さんの現在の姿

 斎藤さんの場合、抗がん剤だけでの根治は難しく、「自分なりに目いっぱい生きて死にたい」との思いから、がんと付き合いながら寿命を延ばすことを目標にした。抗がん剤治療をやめた斎藤さんは先月、余命2カ月の宣告を受けた。

 引き続き飲食店を営んでいるが、見た目は元気でも、体力は落ちた。一番の楽しみは、常連客とのカラオケだ。他にも、絵や詩を書いて、病気やケガをしている友人に送ることを、心の支えにしている。とある調査では、日本人の9割が、斎藤さんと同様に「延命治療は行わず、自然に任せたい」と答えたという。『ABEMA Prime』では延命の是非や、余命宣告後の生き方を考えた。

■延命治療を拒否…余命2カ月と宣告された末期患者

 斎藤さんは今年4月、軽度の脳梗塞をわずらった。入院はしなかったものの、咳が出るようになり、区の健康診断を受診したところ、肝臓や肺、直腸、十二指腸、大腸のがんが発覚する。ステージ4で入院し、抗がん剤治療を受けるも、「根治ではなく延命の治療」と知ってやめた。今の目標は「今年中の根治」だ。

 斎藤さんは「抗がん剤治療は延命であり、治すためのものではないため断った。そしたら、先生から『余命2カ月ですよ』と言われた。ショックはない。がんと闘って、勝つ姿を見せたい」と語る。

 抗がん剤治療は、3クール6週間受けた。「やめてから体調は楽になった。抗がん剤が切れると、体が別人みたいになる。抗がん剤治療を受けている間は、夏物と冬物を交換しようとしても、全然片付けられなかった」と振り返った。

■抗がん剤治療の目的

 抗がん剤治療には、大きく3つの目的がある。がん細胞を死滅させる「根治」と、がん細胞の増殖を抑え、抗がん剤治療をやらないよりも長生きすることを目指す「延命」、そして病状の進行を抑え症状を緩和することで、結果的に延命が図れることもある「症状緩和」だ。いずれのケースも、抗がん剤だけで完治は難しく、がんと付き合いながら寿命を延ばすことが目標となっている。

 抗がん剤治療と緩和ケアが専門で、川崎市立井田病院で腫瘍内科の部長を務める医師の西智弘氏は「抗がん剤治療での根治は、なかなか難しい」とした上で、「抗がん剤も進歩しているが、現状では難しい。最初に『がんと付き合いながら、寿命を延ばす』という目標を患者と共有しながら、生き方をどうしていくか相談するのが基本だ」と説明。

 抗がん剤治療には、副作用もある。吐き気・嘔吐や脱毛、口内炎、しびれなどの末梢神経障害、倦怠感、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少)の影響で、免疫力が低下することによる感染症、貧血などが挙げられる。

 治療方針は、患者の生活スタイルによって変わるという。西氏は「抗がん剤治療をすると、ある程度のQOL(生活の質)は落ちる。落ちたとしても、その分長く生きられることに重きを置くなら、治療した方がいい。反対に、今の生活を保つのが、生き方として合っているならば、抗がん剤治療しない。または60〜70パーセントの治療を考えるなど、すりあわせが大切だ」との考えを示した。

■延命治療の決断「医師と患者の目的の共有が大切」

 延命治療は一般的に、医師からの提案で行われるという。西氏は「ドクターは基本的に、1分1秒でも寿命を延ばすことが使命。『抗がん剤ができるのであれば、やったほうがいい。これだけ寿命が延びるから』と説明することが前提」と話す。

 また、受ける場合に大切なこととして「医師と共に延命治療を受ける目的の共有が大切」とした上で「日本の医療は命を1秒でも延ばすことが最優先で、人が耐えられるギリギリの治療をやりがち。患者の人生を第一に考え、患者の目的・目標を優先すべきだ」と述べた。

 斎藤さんは「延命ばかりを気にしないで、『どの人生が自分に一番価値があるか』に勝負をかけるべきだ」といい、「人生は楽しく生きるべき。『どの人生を選べば、楽しくなるか』で判断した方がいい。これが究極の答えだ」と力を込めた。


(『ABEMA Prime』より)

・【映像】「生活監視されるよう」がん治療のクラファン断念 ネット時代の寄付のあり方・【映像】“余命3年”大腸がんを患った42歳男性が語る「時間を無駄にできない生き方」・顔・頭蓋骨に形成異常を持つ息子を発信する両親の想い「知ってもらうことで手を差し伸べてくれる人が増えるかもしれない」 一方で批判やデジタルタトゥーの懸念も…・若者にも増える“スマホ老眼” 「手元で見ていることが問題」 チェックリスト&目にまつわる“都市伝説”のウソ・ホント・【映像】「私はADHD」診断なしの人も...増えるワケとは?生きづらさの免罪符に?

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。