Sさんがクマに襲われた現場付近にあり、一部のタケノコの売り買いの拠点となっている小屋=秋田県鹿角市で2024年6月18日、工藤哲撮影

 秋田県鹿角市十和田大湯で5月に起きたクマによる3人の死傷事故。現場はタケノコ採りに山に入り死亡した青森県三戸町のSさん(仮名)が毎年通っていた場所だった。

 「まだ亡くなったという実感がわかない。まさかクマに襲われるなんて。悔しい」。青森県内で取材に応じたSさんの妻は、こう語った。

 Sさんは、生活のため山菜やキノコを採りに山に入っていた。各地の現場に向かうたびに、妻も車で一緒に行き、作業が終わるまで待っていたという。Sさんは今回の現場には30年来、毎年のようにタケノコ採りに行っていた。

 5月15日も、妻は親戚の女性と2人で車の中で待っていた。Sさんは朝8時半ごろから山に入り、お昼に一度車に戻ってまた午後にタケノコ採りをする予定だった。だが、昼になっても戻って来ず、異変を感じて第一通報者の男性に相談した。

 「本人はこのあたりはよく知っていたし、山で迷う人ではない。あの日は『たくさん採ろう』と頑張ったのかもしれない」と振り返り「まだあのクマはいる。やっぱり一人では山には入らない方がいい」と話した。【工藤哲】

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