判決後の記者会見で、代理人の松本亜土弁護士と抱き合い喜ぶアフリカ出身の30代男性(右)=大阪市北区で2024年7月4日午後2時43分、土田暁彦撮影

 同性愛を理由にした迫害の恐れがあるとして、日本に逃れたアフリカ出身の30代男性が難民認定を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は4日、男性が難民に当たるとして国の不認定処分を取り消した。徳地淳裁判長(三木裕之裁判長代読)は母国の性的少数者を取り巻く状況を踏まえ、「帰国すると身体拘束や訴追される現実的な恐れがある」と判断した。

 母国で身の危険を感じた男性は2019年末に来日し、間もなく難民認定を申請。大阪出入国在留管理局が不認定としたため、22年7月に提訴した。

 判決はまず、欧米各国の報告書などから男性の母国を検討した結果、同性間の性行為を法律で禁じており、同性愛などの性的指向自体が処罰の可能性があると認定。「性的少数者が嫌悪の対象で危険にさらされている。警察など国家機関の保護を受けるのは困難だ」と指摘した。

 男性は訴訟で、家族から監禁、暴行されるなどし、警察に保護を求めても暴言を吐かれたと主張。国側はこれを信用できないと反論したが、判決は「証言は具体的。不自然や作り話と疑う部分は見当たらない」と判断した。

 そのうえで「性的少数者であることは人間の尊厳にとって根源的で、変更や放棄を強要されるべきではない」との考えを提示。男性が帰国した場合、再び迫害される恐れがあるとし、「難民に該当する」と結論付けた。

 男性は個人が特定されることを懸念し、出身国の公表を望んでいない。出入国在留管理庁は「判決書の内容を精査して適切に対応したい」とコメントした。

 母国での迫害を訴える性的少数者の難民認定を巡っては、23年3月の大阪地裁判決がアフリカ東部ウガンダ出身の女性を難民と認めている。【木島諒子】

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