裏返しにした釜の前で「練り上げる時は、火加減をみながらの作業となり、一番大変」と話す平島さん=宮崎県日南市で、2024年6月26日午後2時6分、加藤学撮影

 宮崎県日南市で江戸時代から受け継がれている黒砂糖作り「さとねり」。石と粘土で固めたかまどや鉄釜による昔ながらの製法を次世代に残そうと「風田製糖組合」(平島二三夫代表、1戸)が大釜の新調を目指し、クラウドファンディング(CF)で資金支援を呼びかけている。

 同組合の資料では、江戸時代に飫肥(おび)藩が生産を始め関西や下関などへ出荷していた。平島さん(66)によると「かつて市内には小さい工場が30軒以上あった」が、白砂糖の台頭などで減少。現在、製造するのは別の製法で作る1戸と、昔ながらの製法を手がける平島さんの計2戸が残るのみだ。

 平島さんは毎年12月、木と石で組んだ吹きさらしの「さと小屋」で作業をする。自家栽培したサトウキビを機械で絞って液状にし、直径・深さが約1メートルほどの釜に入れ、あくを取りながら煮る。竹ざおでアメ状になるまで練り上げ、冷まして箱詰めするまで約6時間。親族総出の徹夜作業で、昨年は約700キロの黒糖が出来たという。

 数十年前に特注した六つの鉄製釜は強い火力にさらされて年々薄くなり、地元の木材・飫肥杉で作った釜を囲うための木枠も老朽化が進む。新調には釜や木枠の1セットで約10万円はかかる見通しで、知人に相談したところ、CFでの資金調達をアドバイスされた。

 「先祖が守ってきた伝統製法。僕の代で消すわけにはいかない。興味がある方はぜひ協力をお願いしたい」と平島さん。資金集めはCFサイト「キャンプファイヤー」で7月12日まで実施し、寄付金額によって日南市内のチョコレート専門店がつくる「さとねりガトーショコラ」や、新しい釜に名前を刻める返礼品がある。【加藤学】

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