車のアクセルとブレーキの踏み間違いの事故が毎年3000件以上起きていて問題となっている。国土交通省は、踏み間違いを防ぐ装置の搭載を義務化する方針を明らかにした。
■「アクセルとブレーキの踏み間違い」の危険瞬間
電柱にぶつかるのを回避 この記事の写真 歩道の防護柵に衝突先月18日、名古屋市内で撮影されたドライブレコーダーの映像。画面右から黒い車が急発進。間一髪、電柱にぶつかるのを回避したかと思いきや、反対車線へ飛び出し、歩道の防護柵に勢いよく衝突。衝突した後、さらにアクセルを踏み込むような音が聞こえる。
事故を起こしたのは75歳の高齢ドライバー。警察の調べに対して「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話しているという。
一歩間違えれば重大事故にもなりかねない「アクセルとブレーキの踏み間違い」。
歩行者のすぐ後ろに突っ込む今年1月、北海道の病院の駐車場でも起きた。画面右側には病棟に向かい駐車場を歩く2人組。すると突然、画面左から黒の乗用車が急発進。2人組のすぐ後ろをかすめるように通り、駐車していた白い車に突っ込み停車した。
警察によると、運転していたのは70代の男性で、自ら警察に通報したという。
運転していた高齢男性「ゆっくり踏み込もうとしたら足が引っ掛かり、アクセルを踏みすぎた」 猛スピードで進む白い車 正面衝突
「踏み間違い」による重大事故も起きている。画面左から道路を猛スピードで進む白い車は、勢いそのままに対向車線にはみ出し、正面衝突しているのが分かる。
回転しながら飛ばされる白い車別のカメラの映像では、対向車に突っ込んだ白い車が回転しながら飛ばされている。
おととし、札幌市内の交差点で起きた多重事故。事故を起こした車は複数台に次々と衝突し、2人がけがをした。運転していたのは当時79歳の高齢ドライバーで、過去5年間、無事故無違反の「ゴールド免許」だったという。
ドライバーを知る人「すごいしっかりしている方だったので、本当に普通に安全運転されてました。見る限りでは毎日」
事故を起こした79歳のドライバーは、直前に手前の交差点で70歳の女性をはね、死亡させる別の事故を起こしていた。その現場にブレーキ痕はなかった。
高齢ドライバー(当時79)「アクセルとブレーキを踏み間違えた。パニックになってしまった」 踏み間違い事故
交通事故総合分析センターによると、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故は毎年3000件以上発生。去年は38人が死亡し、4000人以上がけがをしている。
国土交通省 斉藤鉄夫大臣国土交通省は先月28日、踏み間違い防止装置の搭載を義務付ける方針を明らかにした。
国土交通省 斉藤鉄夫大臣「来年6月に予定されている国連基準の発効に合わせ、国内基準を整備し、義務化に向けた準備を進めてまいりたい」
オートマの新車を対象に義務化の準備を進めるという。
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■踏み間違い防止装置を検証■踏み間違い防止装置を検証
踏み間違い防止装置とはどのようなものなのか。
アクセルをベタ踏みしても急加速せず取り付けられた車を操作すると、アクセルを目いっぱい踏み込み“ベタ踏み”にしても車は急加速せず、スピードは時速7キロほどに抑えられている。また、車内には大きな警告音が鳴り響き赤いランプが点滅。踏み間違いを知らせる。
バックでも同じように急加速しない。さらに、警告音がなっている間はアクセルを何回踏んでも加速しない。
アクセルを思いっきり踏んでも乗り上げず駐車場の“タイヤ止め”に乗り上げようとすると、乗り上げずに止まった。
踏み間違い防止装置この車両に取り付けられた装置は、カー用品店などで「後付け」できるタイプで、2009年の発売から6万台以上出荷している。車種にもよるが、大手カー用品店では4万円程度で取り付けできるという。
サン自動車工業 瀬戸光輝さん「(Q.取り付けるのは、どういう方が多い?)圧倒的に高齢の方。次いで、免許取りたての方。皆様が新車を購入できれば幸せなんでしょうけれども、後付け3万円プラスアルファで安心安全が手に入ると思っていただければ、より一層こういった悲惨な事故を未然に防ぐことができるんじゃないかなと考えております」 レーダーなどで検知するタイプも
現在、国内のメーカーでは、すでに踏み間違い防止の機能が搭載されている車も多く、周りの障害物をレーダーなどで検知するタイプもある。
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■高齢者講習に密着■高齢者講習に密着
運転技術が肝心安全装置の技術が進歩する一方で、肝心なのはドライバーの運転技術だ。
先月29日、千葉県内の自動車教習所には多くの高齢ドライバーが高齢者講習に訪れていた。
一時停止の標識を見落とし 車体が半分以上停止線を越えたところで停止運転歴60年の85歳の女性は、ほぼ毎日運転しているというが、一時停止の標識がある交差点でそのまま前進。停車したのは車体が半分以上停止線を越えてからだ。
センターライン越えさらに注意を受けた直後も、ゆっくりと左折しながらセンターラインを大きくはみ出している。
遠方への運転は控えているが、日常生活で車は手放せないという。
運転歴60年 85歳女性「お買い物とか病院通いですね。やっぱり荷物が多かったりすると、両手に持っては大変なので、年が年ですし」
相次ぐ「踏み間違い」の事故については実感がわかないという。
85歳女性「(ドライバーが)ブレーキとアクセルを間違うというのも不思議でしょうがない」 赤信号を見落とし
スピード違反で「運転技能検査」を受けに来たという80歳の男性は、左右の指さし確認はしたものの、目の前の赤信号を見落とす大きなミスをした。
「運転技能検査」を受けに来た 80歳男性「(若い時と比べ)足なんかでも。とっさの動作が利かないんじゃないかと思いますね」
体の衰えは自覚しているというが…。
80歳男性「免許証返納とかはまだ考えていないですね」 段差の乗り上げに挑戦
「段差の乗り上げ」に挑戦した70代女性は、危うくオレンジ色のポールに突っ込みそうになる。その距離わずか10センチほど。足元を見ると、最初は慎重にアクセルを踏むが、段差の途中でいったん離すと車が後退。とっさにアクセルを強く踏み込み、車は急発進した。
細やかなアクセル操作に苦心する高齢ドライバーたち。中には事故を回避する「安全装置」が作動した経験のある受講者もいた。
「安全装置」が作動 72歳女性「車間距離を取りなさいとか(スピードを)ぐーって抑える機能があって1、2回それが働いたことがある。パニクっちゃうことあるじゃない。自分がそうならないとは言い切れないから。(踏み間違い防止機能は)もしかしたらあったほうがいいのかな」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年7月2日放送分より)
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