「子どもたちは教わった通り、右側を一列になって歩いていたのに……」。千葉県八街市で下校中の児童の列に飲酒運転のトラックが突っ込み、5人が死傷した事故は28日、発生から3年となった。死傷した児童5人が通っていた千葉県八街市立朝陽小の元PTA会長、浜詰大介さん(48)は、よく知る子どもたちが犠牲になった事故にやるせない思いを抱えながらも、飲酒運転がもたらした悲劇を風化させまいと声を上げ続けている。
あの日は、同小関係者からの電話で事故を知った。「またあったらしいですよ」。同小では、2016年にも国道409号で集団登校中の児童の列にトラックが突っ込み、2~5年生の男女4人が重軽傷を負う事故が発生していた。浜詰さんは職員室で教員らと情報収集に追われた。
浜詰さんは13年度から6年間、同小のPTA会長、19~22年度は校区が同じ八街北中のPTA会長を務めた。事故現場は、同小PTAが市などに毎年のように安全対策を要望していた場所の一つだった。事故の後、浜詰さんは危険な箇所を全て洗い出さなければと考え、同小PTAと連携し、急きょ、両小中の児童生徒の全世帯にアンケート調査を行った。
「行政が把握している危険箇所と、実際に歩く子どもにとっての危険箇所が同じはずがない。目の高さ一つとっても大人と子どもでは違う。子どもがどこが危ないと思っているのか、アンケートを機に家族で話し合ってほしいという願いもあった」と振り返る。
「枝がせり出して見通し悪い」「カーブミラーが汚れて見えづらい」といった子どもたちの声と、どう改善してほしいかの要望を取りまとめ、市に対策を求めた。市はこうした要望に応え、通学路の安全対策は着々と進められてきた。
一方で、気になるのが飲酒運転がもたらした悲劇の風化だ。浜詰さんは、防犯カメラの映像で見た、事故直前、現場の100メートルほど手前の道路の右端を一列になって歩いていた子どもたちの姿が忘れられない。「子どもが一生懸命にルールを守っていても、(アルコール)1杯くらいいいだろうという人がいる限り、子どもを守れない。そんな人が一人でもいる間は、大人として声を上げ続けるしかない」と言う。
浜詰さんは県PTA連絡協議会会長に続き、今年5月まで日本PTA全国協議会の関東ブロック長も務めた。その間、「PTAにできること」をテーマに各地で講演を行ってきた。PTAの存在意義にからめて事故にどう対応してきたかを伝えてきた。
「事故をそのまま伝えても、可哀そうだったねで終わってしまう。それよりも、PTAって何のためにあるのと思っている人たちにこそ、事故の後、自分たちがやってきたことを伝えたい。子どもたちを守るためにPTAはあるんだと伝える中で、八街であった事故を多くの人に語り継いでいきたい」と話す。【合田月美】
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