事件から2カ月半、7人目の逮捕者は被害者の実の娘でした。

東京・上野で多数の飲食店を経営していた宝島龍太郎さん(55)と妻・幸子さん(56)夫婦が殺害された事件で、警視庁は27日、宝島真奈美容疑者(31)を殺人の疑いで逮捕しました。

捜査関係者は内縁の夫と共に殺害の意思決定をしていたとみられると話しています。


■逮捕直前 別人を装う姿も

真奈美容疑者は最近、知人にこう漏らしていたといいます。

真奈美容疑者を知る人
「私を逮捕するって(警察が)動いてくるんじゃないかと。2週間ぐらい前ですね」

その1週間後、別の知人は…。

真奈美容疑者を知る人
「(Q.最後に真奈美容疑者と会ったのは)1週間ぐらい前ですね。『真奈美さんだよね』と言ったら『違います』と。面識あるのに」

両親の遺体が見つかった翌日、真奈美容疑者は取材にこう答えていました。

宝島真奈美容疑者
「報道で事件を知った。両親とは連絡が取れておらず、警察から接触はまだない。両親とは2日前くらいに仕事で連絡を取ったのが最後」

しかし一転、両親への殺人容疑で逮捕されました。


■会社の運営めぐりトラブルか

栃木県那須町の山あいで、宝島さん夫婦の焼けた遺体が見つかったのは、2カ月半ほど前のこと。その後、指示役や仲介役、実行役の男らが次々と逮捕。先月には、真奈美容疑者の内縁の夫で、事件を主導したとみられる関根誠端容疑者(32)らが逮捕されました。そして27日に逮捕されたのが、実の娘・真奈美容疑者。動機は、宝島さん夫婦の会社をめぐる運営上のトラブルとみられています。

上野の繁華街で十数店舗の飲食店を経営し、不動産事業や雑貨の輸入販売も手掛けていた宝島さん夫婦。真奈美容疑者も取締役に名を連ねていましたが、今年1月に辞任していました。

宝島さんと10年以上前から付き合いがあるという知人は、こんな事情を明かされていました。

龍太郎さんと10年以上の知人
「2〜3年前に娘とマネージャー(関根容疑者)に『店を少しずつ任せていく』みたいなこと言ってたんだけど、この間オープンしたもんじゃ屋の時には『俺がやってる店は全部俺がお金出してるんだから俺の店なんだ』言い分が変わった。“俺は最終的に退く”みたいなことを言ってたんだけど、それから急にそう変わった。他からちょっとトラブっているみたいという話を聞いて、何げなくカマかけたらそういう答えが出てきた。殺される2カ月か3カ月前くらいに言ってたのかな」

宝島さんは“真奈美容疑者と関根容疑者に後を継がせるつもりだったが心変わりした”ということだったようです。


■事件後 代表取締役に就任

そして事件後、真奈美容疑者は、亡くなった宝島さん夫婦に代わって役員に復帰していました。

龍太郎さんと10年以上の知人
「(宝島さん)夫婦が居なくなった時に誰が得するのか。最初は近所の料飲店のトラブルと言っていたが、僕は違うなと」

こんな話も印象に残っているといいます。

龍太郎さんと10年以上の知人
「2年ぐらい前だったか、龍太郎さんがポロっと言ったのは『うちのやつ(妻)と長女はあんま仲良くないんだよね』ってポロッと言ったのは印象に残っている。普段あまりプライベートなことは言わないので」

真奈美容疑者を含め、7人が逮捕された一連の事件。関根容疑者から依頼を受けた、指示役の佐々木光被告。車やガソリンなどを準備した平山綾拳被告。その平山被告から頼まれ実行役となった若山耀人被告と姜光紀(カン・グァンギ)被告。そして、殺害現場に宝島さん夫婦を誘導したとされる前田亮容疑者。いずれも死体損壊などの罪で起訴され、殺人の疑いでも逮捕されています。

殺害現場とみられているのは品川区の空き家。関根容疑者の認否は明らかになっていませんが「空き家には行っていない」と供述しています。

警視庁は、真奈美容疑者も現場には行っていないとみていますが、スマートフォンの解析などから逮捕に至りました。

真奈美容疑者は逮捕前、知人に事件への関与を否定していました。

真奈美容疑者を知る人
「(Q.『関与してたか』と聞いたことは)『全然あるわけないでしょ』と言われました。一喝されましたけど。絶対に無実という話」

警視庁は、真奈美容疑者の認否を明らかにしていません。


■“殺害の意思決定”誰が…

事件当初から真奈美容疑者と接触するなど取材を続けてきた、警視庁クラブの難波仁史記者に聞きます。

(Q.取材で感じた真奈美容疑者は、どんな様子でしたか)

難波仁史記者
「私が真奈美容疑者と会話したのは4月17日。この日は那須町で発見された2遺体のうち、1人が容疑者の父・龍太郎さんだと分かった当日で、母である幸子さんの身元が分かる前でした。その時、真奈美容疑者は『報道で事件を知った。両親とは連絡が取れておらず、警察から接触はまだない。2日前くらいに仕事で連絡を取ったのが最後』などと話していました。あくまで私の印象ですが、淡々としている印象を受けました。この時に連絡先を教えてもらいましたが、この時以降、連絡を取ることはできませんでした。その後も、事件が進展していくなかで、真奈美容疑者を自宅前で複数回取材しましたが、子どもを保育園に送り迎えするなど、ごく普通の母親の印象で、特段取り乱したような様子は見られませんでした」

(Q.真奈美容疑者の逮捕はなぜ27日になったのでしょうか)

難波仁史記者
「警視庁は、比較的早い段階から事件に関わっているとみていましたが、捜査関係者によると、真奈美容疑者を殺人容疑で逮捕するにあたり、その捜査の見立ての1つに『金の流れ』があるとしていました。つまり『殺害の報酬を誰が用意したか』ということです。そのため、宝島さん夫婦が経営していた複数の店舗、真奈美容疑者も役員などで関わる店舗、その銀行口座1つ1つを洗い出し、金の流れを確認したとしています。ただ、家族経営で“どんぶり勘定”的な経営だったこともあり、確認に時間がかかったのではないかとみられています。実際に真奈美容疑者が用意した金が報酬になったかは現段階では分かりませんが、警察は逮捕につながる証拠を得たのではないかと考えています。捜査関係者は『殺人容疑で再逮捕されている関根容疑者とともに殺害の意思決定をしていたとみている』と話していました。今後は“どちらが殺害を提案して決めたのか”この点を明らかにできるかが捜査のポイントになります。

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