八街市で飲酒運転のトラックにはねられた下校途中の児童5人が死傷した事故から28日で3年になる。事故を教訓に、市は市立小学校で親子交通安全教室を開催し、その効果を確認する実証事業を開始。大学の研究者が分析したところ、手を挙げるなど児童の安全確認行動が増加し、それが運転者との意思疎通の改善につながる可能性があることが明らかになった。【合田月美】
同教室は2023年秋、市立八街北小学校で開かれた。当時の2年生と、家庭でも日ごろから安全教育ができるように保護者にも参加を求めた。
同小体育館での同教室では、専門家が保護者に狙いや手順を説明。卓球台を立て、見通しの悪い道路を再現し、担任の教員が児童に安全な横断の仕方を説明。それを受けて児童らが模擬的に横断し、それを保護者が評価、担任が総括した。その上で担任が模範的な横断を実演した。
実証事業ではさらに、通学路の交差点2カ所にカメラを設置。同教室の開催前後2カ月間にわたり、2年生が習った安全確認行動を実践しているかを調べた。
その結果、具体的な数値は明らかにしていないが、「道路横断前の停止」は同教室開催前、1割未満だったのが開催後は倍以上に増え、「横断前の安全確認」も4割弱からほぼ倍増した。「挙手」「横断中の周囲の安全確認」「走らず横断」の項目でも一定の効果が見られたという。
また、同小周辺の交差点5カ所での2年生の登下校時の車の動きを、本田技研工業(東京都港区)の協力により、カーナビのビッグデータを基に分析。その結果、3カ所で車の急減速がほぼ半減していた。
市の学校教育アドバイザーで実証事業の効果を検証した千葉工業大学の赤羽弘和教授(交通工学)は「子供が手を挙げるだけでなく、左右の確認により運転手の方に視線を送ることでも、運転手の心理的な効果や意思疎通の改善につながる可能性が示された。また、通学路の安全確保には児童への教育だけでなく、車への働きかけが必要であることも分かった」と分析した上で「親子安全教室の効果を明確に示せれば、他の学校にも広がっていくことが期待される」と話した。
市では分析結果をさらに精査し、市全体の事業として取り組んでいく考えだ。
八街市児童5人死傷事故
八街市の市道で2021年6月28日、下校中だった市立朝陽小の児童の列に大型トラックが突っ込み、3年の男児(当時8歳)と2年の男児(同7歳)が死亡。児童3人が大けがをした。運転していた男性は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われ、22年4月に懲役14年の判決が確定した。
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