小児がんの一種「小児脳腫瘍」の診断には最新の遺伝子検査が必要だが、日本では保険適用外のため、高額な費用負担がのしかかる。小児がん専門医らでつくる名古屋市のNPO法人「日本小児がん研究グループ」(JCCG)脳腫瘍委員会は、検査を無償で受けられるように患者への支援を続けているが、財源に限りがあるとして、インターネット上の「クラウドファンディング(CF)」で寄付を募っている。
小児脳腫瘍は、15歳未満の子どもにできる脳腫瘍の総称だ。ただ、大脳や小脳など発生部位によって100種類以上に分類され、それぞれ治療法も異なる。効果的な治療をするためには最新の遺伝子検査で種類を特定する必要があり、海外では同検査を保険診療として認可する動きが広がっている。
一方、日本では認可の見通しは立っていない。小児脳腫瘍と診断されるのは年間500人程度であることなどから、企業の認可申請の動きが鈍いことが背景にあるという。
現状は自由診療として受けるしかないが、正確な診断ができる最新の遺伝子検査は約20万円と高額だ。また、日本では保険が適用される治療と、自由診療を併用する「混合診療」は認められていない。このため、同検査を受けると、関連する治療も含めて全額が自由診療になる可能性もある。
こうした状況を受け、JCCG脳腫瘍委員会は2016年から、患者が無償で検査結果を得られるよう支援を開始。同会に加盟する全国の医療施設で患者の遺伝子の検体を採取し、有志の専門医の研究費を使って検査している。ただ、財源には限りがあり、対象は簡易検査では診断が難しいなど一部の患者に限定している。
同会は、支援を続けるには年間約800万円が必要と試算。財源確保のためのCFは3月から始め、寄付額は既に400万円を超えた。CFの責任者を務める大阪市立総合医療センター小児血液腫瘍科の山崎夏維医師は「最新の遺伝子検査を患者全員が遅滞なく平等に受けられるようにしたい。多くの実施例を積み上げ、国や企業側に認可を働き掛けたい」と訴える。
CFは600万円を目標に26日まで募集する。アクセスはQRコードから。【志村一也】
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