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男性から性別変更した女性が、自分の凍結精子で女性パートナーとの間にもうけた次女を認知できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は21日、「認知できる」とし、親子関係を認める判断を示しました。

今回の裁判について、当事者の関係性について、確認します。
 Aさん(40代)とBさん(30代)は女性同士のカップルで、2人には5歳の長女と、3歳の次女がいます。
 Aさんは、性同一性障害により、男性から女性に性別変更をしました。2人の娘は、Aさんが男性だったころに凍結した精子から生まれました。生物学上、2人の子は、AさんとBさんの間に生まれた血縁上の親子です。

 しかし、Aさんのみ、父親として認められなかったため、子どもの認知をめぐって、家族で裁判を起こしました。その後、高裁で長女は、Aさんと父子関係が認められ、次女は認められませんでした。その理由は、子どもが生まれた“時期”にあります。

長女は、Aさんが“性別を変更する前”に生まれていて、次女は“変更した後”に生まれています。娘2人は、Aさんの精子で生まれた子どもであるが、法律上の性別が女性になった後に生まれた次女は、親子と認められませんでした。

そして、21日、最高裁で父親と認められたAさんに、直接、話を聞くことができました。

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女性が求めた“父子関係”

(Q.判決はどのように受け止めていますか)
Aさん:
「やっと普通に親子になれたんだなと思って、うれしかったです。病院に連れて行ったりしても、親じゃなかったりして、実質的には親子なんですけど、親子じゃないんだなと、度々、感じられたり。普通だったら親子関係でできることができなかったり。父でもないし母でもない、疎外感を感じているというか。思ったのは、子どものこと。私が親だよというのは、子どもにもわかってほしいし、そこを私が否定して、何もしないのは違うかなと思った。そこは、やっぱりあきらめられなかった」

今回のような場合、行政裁判にするケースが多いなか、子どもがAさんを訴えるという手法がとられました。

アイデアを出した弁護士は、会見でこのように振り返っています。

仲岡しゅん弁護士
「“子どもに親を訴えさせる”という手法をとりました。これはかなり奇策です。通常、訴訟の当事者は対立している。でも本件は対立していない」

最高裁の判決には「未成年の子が認知を求めているのに、それを法的性別を理由に妨げるのは、“子の福祉”に反している」といった内容のものが含まれていました。

仲岡しゅん弁護士
「最高裁判決のポイントは、しっかりと高裁判決を批判している。親子関係を認めないのは、かえって“子の福祉”に害すると。非常にシンプルに認めた、常識的な判断を下した判決と評価」

Aさん
「いろんな悩みを抱えている人がいると思うんですけど、私は小さいころから最初に性別で悩んできて、家族のこととか、就職だったり結婚だったり。一番いいのは、自分がなりたい・信じていることをあきらめないで、やれるだけのことをやってみると、意外といい方向に行くかもしれない。私がトランスジェンダーだってことを、カミングアウトしたときに意外とすんなり受け入れてくれるとか。『子どもがいるよ』って話しても、普通に受け入れてくれる方もいるので、価値観は変わってきていると、日々、感じています」

(Q.子どもなど大事な人にどのように報告しますか)
Aさん
「やっとちゃんと法的にも親子になったよ。伝え方…悩んじゃいますけど」

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最高裁“初判断”理由は

◆最高裁の判断のポイントです。

●法律上の親子は、血縁上の親子関係に基礎を置く。“生物学的な親子関係”が法的性別によって異なることにはならない
●未成年の子が認知を求めているのに、それを法的性別を理由に妨げるのは子の福祉に反しているなどが挙げられています。

さらに、裁判官の1人である三浦守判事は「生殖補助医療技術の発展や利用の拡大が進むなか、法整備の必要性が認識される状況にありながら、20年を超える年月が経過。すでに現実が先行に至っている。現行法の適切な解釈に基づく法律判断を行って、事件を解決することは、裁判所の責務である」と述べました。

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