2023年7月10日午前6時台の雨雲レーダー。九州北部では楕円(だえん)で囲まれた線状降水帯の雨域が二つも発生した=気象庁ウェブサイトから

 平年より遅れたものの九州北部(山口県含む)・南部とも梅雨入りした。九州で毎年のように観測され、各地に甚大な被害をもたらす「線状降水帯」について、気象庁は大雨の警戒に役立つよう半日程度前から予測情報を発表している。どのように情報を活用したらいいのか、福岡管区気象台の担当者に聞いた。

 線状降水帯は、積乱雲が次々と発生して長さ約50~300キロに並び、同じ場所で数時間にわたって大雨を降らせる。同気象台予報課の防災気象官、渡辺剛さん(51)は「発生すると急激に災害の危険度が高まる可能性がある」と指摘する。

 こうした現象から命を守る行動につなげてもらおうと、気象庁は2021年から線状降水帯の発生情報を発表。翌22年に「半日前予測」を始め、今年5月からは発表の対象地域を地方単位から府県単位とし、発生の可能性がある時間帯や予想雨量などを伝えている。

 半日前予測はすぐに避難を促す情報ではないが、「情報を見聞きしたら、大雨に対して一段高い意識を持ってもらいたい」と渡辺さん。九州ではこれまで、夜間から明け方にかけて線状降水帯が発生した事例が多かった。夜間の避難は危険が伴うため、移動に時間がかかる人は明るいうちの早めの行動がよいとされる。避難の判断には、気象庁のサイトで見られる土砂災害や浸水などの危険度を色分けした地図で示す「キキクル」(危険度分布)が役立つ。

 平時にできる備えとして、渡辺さんは「自分がいる場所にどのような災害の危険があるのかを把握すること」を挙げる。各自治体のハザードマップや避難場所、避難経路の確認をしておくとよい。

 線状降水帯の正確な予測は難しく、的中率は4回に1回程度とされ、気象庁は予測技術の改善に取り組んでいる。予測通りでなくても災害級の大雨になる可能性はある。渡辺さんは「どこで起きてもおかしくない。『我が事』感を持って準備をしてほしい」と呼び掛けている。【山崎あずさ】

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