大阪高検、大阪地検、大阪区検が入る大阪中之島合同庁舎=大阪市福島区で、岩井香寿美撮影

 大阪地検特捜部が捜査した奈良県御所(ごせ)市発注の火葬場新設工事を巡る汚職事件で、捜査に協力した容疑者らの刑事処分を減免する司法取引(合意制度)が適用されていたことが判明した。この事件では元御所市議が現金7500万円を受け取ったとして加重収賄罪に問われている。東京地検特捜部以外の検察の捜査で、司法取引の適用が明らかになるのは初めて。

 元御所市議の小松久展(ひさのぶ)被告(71)は現職だった2020年7月の市議会で、建設会社「ゴセケン」(御所市)を代表とする企業グループが受注する事前合意があるのを知りながら、工事請負に関する議案に賛成。21年、ゴセケン幹部だった2人=贈賄罪で有罪確定=から現金計7500万円を謝礼として受け取ったとされる。

 小松被告の公判が20日に大阪地裁であり、コンサル会社員として企業グループの受注に協力したとされる男性が証人出廷。尋問のやりとりで司法取引に合意したことが明らかにされた。

 特捜部はこの男性との取引で得た証拠を踏まえ、企業グループが工事を受注した経緯のほか、小松被告の関与など事件の実態解明につなげたとみられる。

 この男性は立件されていない。一方、小松被告は4月23日に大阪地裁で開かれた初公判で「賄賂ではない」と否認。弁護側は「関係者の供述は仕立て上げられたものだ」と主張し、違法な捜査だったとして裁判を打ち切る「公訴棄却」を求めた。

 司法取引は18年、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件(10年)をきっかけに導入された。容疑者や被告らが他人の犯罪を明らかにするのと引き換えに、検察官が起訴を見送ったり、求刑を軽くしたりできる。【高良駿輔】

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