戦没画学生慰霊美術館「無言館」(長野県上田市)の共同館主に文筆家の内田也哉子さん(48)が就任した。14日に行われた就任記者会見では、親子二代にわたって交流がある無言館への思いを語った。【高橋秀明】
2018年に亡くなった母で俳優の樹木希林さん(享年75)が生前、同館館主の窪島誠一郎さん(82)と親交があったことなどを縁に、内田さんも22年に同館の「成人式」に招かれるなど交流を深めてきた。23年暮れには窪島さんとの共同館主就任を打診され、悩んだ末、今年6月1日付で就任した。
「早くに結婚し家庭に没頭し、文筆活動も続けながら、気がつけばあっという間に人生の折り返し地点に立っていた。そんな中、命を閉じようとする母から『そろそろ誰かの役に立てるような、あなたならではの社会とのつながりを持てるといいわね』と背中を押された」。内田さんは会見で「大きすぎる役割と責任にたじろいでいる」と口にしたが、希林さんからの一言が決断を後押しする形になった。
無言館は1997年に窪島さんが私設美術館として創設。太平洋戦争や日中戦争で戦死した美術学校の学生や卒業生の遺品などを集め、現在は戦没画学生約130人の150作品を展示している。収蔵点数は約700点にのぼる。
「戦争を知らない者として、けれど今なお戦争が絶えない世界に生きる一人として、希有(けう)な美術館の存在を皆さんにお伝えできたらと思う」。ロシアのウクライナ侵攻やガザでの人道危機が続く中、内田さんは同館の存在意義を説く。
会見では、学校法人立命館が今後、同館の運営をサポートしていくことも発表された。内田さんによる学生向け講演会なども予定されている。内田さんは「戦争をとらえる時、重苦しい空気になりがちだが、画学生たちは戦争に出る前はキラキラしている日常を過ごしていた。アートを通して、平和とはどうあるべきか、堅苦しくなりすぎずに対話や交流を深めたい」と、若い世代と関わる機会を待ち望んでいる。
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