高齢ドライバーの交通事故が多発する中で、運転免許の自主返納が伸び悩んでいます。 また、免許更新時の高齢者講習では、信号無視なども多く見られるということです。
■進まない…運転免許の自主返納
70歳以上で運転免許を持っている人は、約1360万人と、免許を持っている人全体の16.6%です。 そのうち75歳以上の人は、約730万人で、全体の8.9%。 80歳以上の人は、約300万人で、全体の3.7%です。
運転免許の保有者数 この記事の写真は25枚70歳以上の自主返納の人数です。 東京の池袋で暴走事故が起きた2019年には、約51.5万人でしたが、そこから徐々に減り、2023年の返納者数は、約34.5万人でした。
70歳以上の免許自主返納人数高齢ドライバーが、免許を返納しない理由です。
運転歴62年 80歳男性「孫の送り迎え、ボランティア活動、趣味で使うので、車が必要」 運転歴50年 73歳男性
「通勤、用事で車が必要。今は安全運転を自覚できていて、迷惑かけないから大丈夫」 運転歴52年 70歳男性
「車がないこと自体考えられない。必ず車はあるもの。米寿(88歳)くらいまで運転できれば理想」 免許を返納しない理由は…
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■80代の7割超「運転に自信」 子ども世代も葛藤■80代の7割超「運転に自信」 子ども世代も葛藤
高齢者の免許返納が進まない要因の1つが、『運転への自信』です。
日常的に車を運転している人に行った調査では、20代で運転に自信があると答えた人は39.3%でした。
それに対して、80歳以上の人では72.0%が、「運転に自信がある」と答えています。 高齢になるほど、運転に自信があるという結果になりました。
親の免許返納について、高齢ドライバーの子ども世代の声です。
76歳の父親を持つ40代女性「父の運転は、昔と比べブレーキが甘い。急発進など怖いが、まだ乗っていたい意志が強い」 78歳の義理の父親を持つ50代女性
「返納を勧めているが、義父は元タクシー運転手で、運転に自信があり、田舎の不便さもあって強く言えない」 70代の父親を持つ50代男性
「返納の話を切り出すと『買い物にも行けない!どうするんだ』の一点張りで空気が悪くなる。ネットで頼んだら?と言ってもネットが使えない」 高齢ドライバーの子ども世代の声
運転免許を返納した高齢者が不便さを感じているのが、『都市部』では25.0%ですが、『地方都市』では37.4%、『過疎地』では60.5%です。
不便さを感じる理由です。
▼買い物・お店などに行きにくくなった。
▼病院に通院しにくくなった。
▼出掛けたいときに出掛けたり、外出先で居たい時間まで居たりするのが難しくなった。
高齢ドライバーの親に、子どもの声が届いていないという調査結果もあります。
「親に運転が危ないと伝えたことがある」という子ども世代は、80%です。
これに対し、「子どもから運転について『危ない』と伝えられたことがない」という高齢ドライバーは76%です。
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■子vs高齢親 返納めぐる攻防■子vs高齢親 返納めぐる攻防
免許の返納をめぐる親子のケースです。
父親が80代、娘が50代、北海道在住です。 娘は、お父さんが80歳を過ぎた頃から、 「最近、高齢者の事故が増えているけど、お父さんは免許返納考えていないの?」と、遠回しに免許返納を促していました。
これに対して、お父さんは、 「車が無かったら、買い物にも、病院にも行けない。今まで何もなかったんだから大丈夫だ!」と、しつこく話すと機嫌が悪くなりました。
お父さんは、85歳のとき病気を患い、歩くことが多少不自由になりました。 娘さんが免許返納の話をすると、お父さんは「車にはもう乗らない」と聞き入れてくれました。
85歳父に免許返納の話をすると…しかし、89歳になったお父さんが、買い物に行こうと車に乗り込むのを、娘さんが目撃。 娘さんは、「こんなに言っても、まだ分からないの?子どもだけではなく、孫にも迷惑かけることになったらどうするの!」と叱りつけたといいます。
買い物に行こうと車に乗り込むのを娘さんが目撃その後、お父さんは新たな病気による、体力の低下を自覚。 孫からも説得を受けて、免許証返納を決意して、車を処分したということです。 娘さんは、「返納を確認した時はホッとした」と話しています。
孫からも説得を受けて免許証返納を決意次のページは
■高齢者の免許更新…危ういドライバーも■高齢者の免許更新…危ういドライバーも
高齢者の免許更新の仕組みです。●70歳以上の場合、免許更新の際に、座学や実車指導など『高齢者講習』の受講が必要です。
●さらに75歳以上では『認知機能検査』が必要になります。
75歳以上の高齢ドライバーが免許を更新する場合、過去3年に一定の違反歴がない人は、『認知機能検査』を受け、認知症の恐れなしと判定されれば、高齢者講習を受けて免許が更新できます。
高齢者講習には、合否がないので『認知機能検査』に通れば、免許更新ができます。 『認知機能検査』で『認知症恐れあり』となれば、免許は更新できませんが、免許の更新期限までの6カ月間は、何回も『認知機能検査』を受けることができます。
過去3年に一定の違反歴がある人には、『運転技能検査』が義務付けられています。 合格すると、『認知機能検査』を受けることができます。不合格なら『免許失効』ですが、約9割の人が合格です。 そして、この検査も免許の更新期限までの6カ月間は、合格するまで何度も受けられます。
高齢者の免許証更新の仕組み この75歳以上に義務づけられている『認知機能検査』は、記憶力や判断力を測定する検査です。検査方法は2つあります。
1つが『手がかり再生』です。 16個のイラストを記憶した後、関係のない課題を行い、その後、記憶したイラストが回答できるかテストします。
もう1つが『時間の見当識』です。 検査時の年、月、日、曜日、時間を回答していくテストです。
八尾自動車教習所で教習指導員をしている浅田さんは、教習所で認知機能検査を担当しています。 浅田さんが経験した、不安な高齢者です。
認知機能検査の方法を説明しているとき、テストを受ける高齢者は、浅田さんの方を見ながら、適切なタイミングで頷き聞いています。 ただ、「では始めます」と浅田さんが言うと、「何をするんですか?」と聞かれたということです。
認知機能検査を通過した後の『実車指導』での危うい場面です。
カーブで大回りしたので、浅田さんが、「対向車線に出ています。小回りしましょう」と注意したところ、女性は「いつも運転している車と違うからうまくできない」と車のせいにしたといいます。
さらに、一時停止の無視です。
一時停止を無視したため、浅田さんが、「しっかり止まってくださいよ」と注意したところ、男性は 「あそこで止まっても周りは、全く見えないからね。停止線の位置がそもそもおかしい」と返されたといいます。
講習を受ける高齢者が2人一緒に乗車して実車指導する時、同乗者の運転に対して、「一緒に実車指導を受けた、あの高齢者の運転が怖かった。カーブのスピードが速いし、交差点でもふらつくし、一時停止で止まらない」と話す高齢者ドライバーに対し、あなたも同じような運転をしていると指摘しても、ひとごとのように受け取られるといいます。
実車指導で「指摘してもひとごと」な場合も番組で取材した自動車教習所でも、停止線を越える『オーバーラン』や信号無視、段差に乗り上げてから一時停止しないといけない場面で、急アクセルを踏んでしまう高齢ドライバーがいました。
番組取材した危ない高齢者ドライバー 浅田さんです。「認知機能検査をギリギリで通過したり、運転技術が危うい高齢者は少なからずいる。小さい車に乗り換えを促したり、暗くなる時間は、運転を控えた方がいいといったり、アドバイスは積極的に行う」 八尾自動車教習所で教習指導員をしている浅田さん
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■交通事故を防ぐため…海外で普及“限定免許”■交通事故を防ぐため…海外で普及“限定免許”
高齢者ドライバーの交通事故を防ぐために、海外で行われている取り組みです。
海外では、高齢者や一定の病気などの人を対象に、運転することが出来る時間帯や場所などについての『限定条件付免許』を導入しているところがあります。
アメリカのイリノイ州では、75歳以上の高齢運転者の場合、免許更新の際に義務付けられた実車試験の結果や、医師による診断をもとに、限定条件付免許の付与が判断されます。
アメリカのイリノイ州では… 条件の内容です。●人口3500人未満の町限定
●生活に必要な病院や教会などの場所限定
●日中のみ運転が可能
などです。 限定条件付免許の付与の条件は
オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、85歳以上の免許保持者は、申請書に自分に“必要な外出先”を記入することで、自分に合った範囲内での限定条件付免許が付与されます。
オーストラリアのニューサウスウェールズ州では…“必要な外出先”は、買い物や通院先、趣味の活動先、ボランティア活動先などです。それぞれ頻度や移動距離、移動時間を記入して提出した後、担当者と相談して運転可能範囲を決定します。
“必要な外出先”の内容 山梨大学大学院の伊藤安海教授によると、「限定条件付免許を取り入れて、段階的に運転する時間や、場所を区切ることで、徐々に車がない生活に移行する間の段階を作ることが大切」ということです。 山梨大学大学院の伊藤安海教授
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年6月11日放送分より)
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