室温が26度でも熱中症に要警戒――。気温がさほど高くなくても、湿度が高いために熱中症になる「梅雨型熱中症」に、専門家が注意を呼び掛けている。梅雨時は水分不足に気が付きにくい「かくれ脱水」など、特有のリスクが潜んでいるという。今からできる対策を聞いた。
全国有数の暑さで知られる埼玉県熊谷市の埼玉慈恵病院には毎年、大型連休ごろから熱中症の患者が搬送され、6月に増える傾向にある。25年間、熱中症の救急医療に携わる藤永剛副院長によると、湿度の高い日や閉めきった体育館など、高湿度の環境から搬送されるケースが後を絶たないという。
湿度が大きく影響する「梅雨型熱中症」が近年、知られるようになってきた。東京消防庁の統計によると、2023年夏の熱中症搬送者は、気温25~35度、湿度50~80%の範囲で多かった。熱中症のリスクを示す「暑さ指数」は気温や日差しの強さに加え、湿度も考慮して算出される。暑さ指数の推定図では、室温が26度でも湿度70%で熱中症の「警戒領域」に。梅雨時の湿度は80%前後とされ、気温が低くても熱中症になるリスクは十分ある。
梅雨型熱中症の主な要因として、藤永さんは①隠れ脱水②汗が蒸発しにくい③体が暑さに慣れていない――の三つを挙げる。「かくれ脱水」とは、自分でも気付かないうちに脱水症状に陥る一歩手前の状態。藤永さんは「梅雨時は喉の渇きを感じにくい。夏場のように早めの水分摂取を意識しないと、じわじわと脱水になる」と説明する。
また、「梅雨に洗濯物が乾きにくいのと同じで、汗が蒸発しにくく、体温も下がりにくい」という。
人間の体には、暑さに慣れるため皮膚の血流を増やして汗をかきやすくする「暑熱順化」という働きがある。だが、暑熱順化には数日~2週間ほどかかる。梅雨時は涼しい日もあり、暑熱順化が追い付かない場合が多いという。
予防のポイントは運動と水分摂取、食事だ。藤永さんは「汗がにじむくらいの運動や入浴を続け、(汗をかく練習をすることで)早めに機能を獲得することが大切」と勧める。夏場と同様に水分摂取を心掛け、多湿や高温を避けるほか、水分保持に重要な筋肉を強化するたんぱく質の摂取など、食事管理が大事という。「真夏の熱中症は進行が早いが、梅雨時の熱中症はじわじわと進む。知識を持って早めに対策をするのが有効だ」と呼び掛ける。
気象庁の6~8月の3カ月予報によると、今年は全国的に気温が高く、梅雨時の6~7月は曇りや雨の日が平年より多い地域があると見込まれる。同庁は「湿度は熱中症リスクを高める要因の一つ。6~7月は平年より気温が高い見込みで、熱中症に一層気を付けてほしい」としている。【木許はるみ】
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