世界文化遺産の登録を目指す新潟の「佐渡島の金山」について、ユネスコの諮問機関は「登録を考慮する価値あり」としながらも、最後の宿題を残しました。政府などは7月インドで開かれるユネスコの委員会での登録を目指し、一丸となって対応すると表明。登録に向け大詰めを迎える佐渡を取材しました。
■佐渡金山「ハードル超えた」世界遺産へ前進
江戸時代から400年もの間、金銀を産み出し、その規模は日本最大とされる「佐渡島の金山」。
史跡佐渡金山 広報 名畑翔さん
(中に入ると涼しいですね)「そうなんです。10℃ちょっとなんですけど」
坑道では、江戸時代の採掘風景が人形で再現されています。
史跡佐渡金山 広報 名畑翔さん
「佐渡金山の岩盤はすごく硬いので、1日10センチしか掘れない一方で、その対価があるということで皆さん頑張って掘っていた」
山が真っ二つに割かれた異様な姿は、人間が金を求め、山頂から手作業で掘り進めた証です。
滋賀からの観光客
「感激で何にも言えません。長々、待ちに待った佐渡です。安心してあの世へ行けます」
世界遺産暫定リストに記載されてから13年。ユネスコの諮問機関・イコモスは6日、登録を認めるうえで追加の情報を求める評価を下しました。政府は、7月の世界遺産委員会での登録を目指しています。
地元の関係者は、この評価をどう受け止めたのでしょうか。30年もの間、地元で世界遺産登録に向け活動してきた中野洸さん(83)です。
佐渡を世界遺産にする会 中野洸会長
「実は世界遺産にしようと言い出したのは僕なんです。第1ハードルは超えたということで、7月には必ずユネスコに認定されると思っています」
■熱高まる一方観光に課題…お膝元を“スルー”
「佐渡島の金山」が世界遺産に登録されれば、年間の観光客が1.2倍に増えるとの試算もあります。期待が高まるなか、ある課題を抱える地域がありました。
金山のお膝元、佐渡市の相川地区。多くの鉱山関係者が暮らしていた当時の趣を今に残しています。しかし…。
新潟県内からの観光客
「相川は…あんまり行かないです」
多くの観光客が訪れるのは、金山などの有名スポットだけで、街の中心部は“通過”してしまうという現状があります。そこで今、新たな街の魅力を生み出そうと、あるプロジェクトが進んでいます。
■「蔵のある古民家に泊まる」分散型ホテルとは
相川車座 雨宮隆三社長
「3時間の観光地を2泊3日、3日間楽しんでもらう観光地にして『相川ファン』を増やしていきたい」
行政などと連携し、まちづくりに取り組む「相川車座」。社長の雨宮さんが案内してくれたのは、街の中心部にある古民家です。
相川車座 雨宮隆三社長
「地域全体で楽しめるよう4棟の『分散型ホテル』という形で、1泊2日の住民になって、昔からあるこの古民家に泊まってもらう」
客室やフロントなどの機能を分散させ、街全体を一つの宿泊施設に見立てる「分散型ホテル」。イタリアで始まったとされるホテルのスタイルです。
相川車座 雨宮隆三社長
「建物の中にある蔵から入る客室なんです」
鉱山町の歴史を感じてもらおうと、蔵が残る建物やかつての社宅などの古民家を客室として改修しています。さらに、こんなこだわりも。
相川車座 雨宮隆三社長
「なかなか観光客が普通だと行けない、地元の飲食店に足を運んでもらえるような仕掛けにしたいと思っています」
あえて夕食の提供はしません。周辺の飲食店などに足を運んでもらうことで、地域の人との交流や街並みを楽しんでほしいという考えです。
■歴史文化を守る!活かす!100年続くまちづくり
こうした街全体を巻き込む取り組みの狙いは、100年後もにぎわいが続くまちづくりです。
相川車座 雨宮隆三社長
「ホテルを開発することが目的ではなくて、将来移住をする人や何回も相川に来てもらう人を増やしたいというのが僕らの目的なんです」
宿泊施設は1人1泊2万5000円前後で、世界遺産登録の可否が決まる7月のオープンを予定しています。
相川車座 雨宮隆三社長
「この街の魅力自体は世界遺産になってもならなくても変わらないと思っています。400年積み重ねてきたものなので、街の皆で自信を持ってこの街を楽しんでもらえるような場所にしていきたいなと思っています」
(「サンデーLIVE!!」2024年6月9日放送分より)
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