漁港で海女と談笑するビシェさん(左)=鳥羽市石鏡町で2024年6月5日午後2時44分、下村恵美撮影
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 日本の海の文化や歴史、現状を学ぼうと来日しているフランスの国家最優秀職人章(MOF)の称号を持つ料理人、ソニア・ビシェさん(28)が5月29日から三重県鳥羽市に滞在している。市内の漁村で海女や漁師と交流し、自然が豊かで資源を保護しながら生活を営む人々に驚きと関心を示し、「必ず、また来たい」と再訪を誓った。

 鳥羽市内を巡ったビシェさんが「夢の国だった」と語ったのが、5月31日に訪れた答志島だ。鳥羽磯部漁協答志支所の市場ではタイやタコの水槽をのぞき込んだり、漁師が水揚げする様子を見たり、仲買人の競りを見学した。説明役を務めた浜口利貴理事から「40年前に比べて、漁師も水揚げも半分以下になった」と離島の厳しい実情を熱心に聞き、漁師が船から魚を市場に運び込む作業を写真に収めていた。

 ビシェさんは過剰消費による食品ロスが社会問題になっていることを危惧している。鳥羽では海女も漁師も、資源を守るために水揚げする量や日数を制限し、捕ったアワビなどが大きさの基準に満たない場合は海へ返すといった資源管理を漁師たち自らが取り組んでいる姿勢を知り、フランスと異なることに驚いていた。

 海を中心に生活も産業も成り立っている様子を答志島で知り、現代ではなかなか実感することがない、住民と自然の共存を感じられる場所が「まだ、あった」と絶賛した。

答志島の市場で浜口利貴さん(中央)と歓談するビシェさん(右)=鳥羽市答志町で2024年5月31日午後1時51分、下村恵美撮影
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 5日に訪れた石鏡(いじか)町では海に潜って海女の作業を見学した。水中でベテラン海女が次々とアワビを見つけているのを見て、岩場を探してみたが、「どこにいるのか、一つも見つけられなかった」と悔しがっていた。

 海女小屋では傷が付いて出荷できないアワビを肝付きで試食したという。「肝は初めて食べた。少しためらったけど、おいしかった」と笑顔で語った。また、海女に以前と比べて海が変化しているかなど、環境に関することを質問する姿も見られた。

 滞在中は、鳥羽市内のホテルで料理人と調理交流し、飲食店や観光施設も訪れた。鳥羽の印象を「食事も地域の人のアテンドも全てのもてなしに心がこもっていた」と称賛した。

 シーフード料理を専門とするビシェさんはフランスのほか、スイスやモナコでも修業し、腕を磨いた。2020年に貝料理の世界的なコンテストで優勝するなど実力が認められ、23年には日本の人間国宝に値すると言われるMOFをシーフード部門で受章した。

 現在は世界中を旅しながら魚介類の研究をしている。国内には23日まで滞在し、京都府や愛知県なども訪れる予定で、その様子はフォロワー2万人を超えるインスタグラム(soniabichet_mof)で発信している。【下村恵美】

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