先月、滋賀県大津市で、保護司をしている60歳の男性が殺害された事件で、 別の容疑で逮捕された30代の男が殺害に関与している可能性が浮上しました。
新庄博志さん(60)は、保護司として20年近く、罪を犯した人の更生に寄り添ってきました。
同じ地区の保護司:「信じられなかった。いまだに信じられない。何事にも意欲的でパワーがある。社会全体が温かい、安心安全な社会になるよう力を注いでくれた」
新庄さんの遺体が見つかったのは、先月26日のこと。連絡が取れず、心配した親族が駆けつけると、玄関に鍵はかかっていませんでした。リビングで倒れた新庄さんを見つけると、すでに亡くなっていたそうです。体には、刃物でつけられたような10カ所以上の傷がありました。
新庄さんの本業は、レストランの経営。妻は単身赴任中で、1人暮らしだったそうです。
事件が発覚する2日前の24日午後5時ごろ、新庄さんは従業員に「別の店に行ってから帰宅する」と言って、レストランを出ました。ところが、午後8時ごろ、従業員が電話すると、連絡が取れない状態だったということです。
警察は、その夜、新庄さんが亡くなったとみています。
事件が発覚した先月26日の2日後、現場周辺で別の事件が起きていました。
現場近くに住んでいた30代の男が、ナイフを所持していたとして、銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕されていたことがわかりました。男は、別の強盗事件で5年前に懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年の有罪判決を受けていました。来月、執行猶予期間が終わる予定で、新庄さんとも接点があったといいます。
警察は、この執行猶予中の男が、新庄さんの殺害に関わった可能性があるとみていて、容疑が固まり次第、再逮捕する方針です。
同じ地区の保護司:「何とか間違いであってほしい。私自身は、何人も見てきたが、心配や危険な思いは一つもない。保護司を退任された方々が、口をそろえて『やって良かった』と」
保護司は、罪を犯した人の立ち直りを支える非常勤の国家公務員です。出所した人が住む場所や、働く場所を確保したり、月に2〜3回の面談で、相談に乗ったり。交通費などは支給されても、報酬はありません。実質的には、民間のボランティアです。
新庄さんが保護司になったのは2006年ごろ。2018年、滋賀県更生保護事業協会の事務局長に就任しました。
新庄さんを知る保護司:「誰もが社会に取り残されないという大きな目的を持って、取り組んでいたのが新庄さん。強い思いを持って取り組んでいた」
この地域は、保護司1人で2〜3人を受け持つケースが多いそうです。
保護司の定数は、全国で5万2500人と定められていますが、現在、4万7000人ほど。1割ほど足りない状況が続いていて、60歳以上が8割を占めています。
今回、新庄さんが亡くなったことに、法務大臣は、こう述べました。
小泉法務大臣:「長く頑張って、本当に一生懸命、熱心に取り組んでこられた。保護司が安全安心に活動できる環境をつくることが重要」
担い手不足に歯止めをかけるため、国も議論を進めています。推薦で選ぶ保護司制度に公募制を導入することや、最長80歳までとしている年齢の上限見直し。そして、報酬を支払うようにするかなど、秋をめどに報告書の案をまとめる方針です。
同じ地区の保護司:「何とか頑張ろう、更生しようと思っている人がほとんど。罪を犯した人たちに対する目が厳しくなると非常に残念。それは新庄さんの思いとは、全く逆の方向になっていく。保護司になる人が増えて、頑張ってもらえれば」
法務省によりますと、保護観察中に担当保護司が殺害された事件は、これまで1件もないといいます。
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