2023年7月に九州北部地方を襲った大雨で被害を受けた田主丸中央病院(福岡県久留米市田主丸町)が、新たな対策として工事を進めている防水壁などを報道陣に公開した。水害対策の総費用は約8・5億円。梅雨の時期を前に、鬼塚一郎院長は「二度と水害を受けないよう、できることは全てやる」と思いを語った。【田崎春菜】
大雨で病院(343床)は1階が床上約30センチまで浸水し、救急や外来患者の受け入れを8日間停止した。近くでは6人が死傷する土石流が起きたが受け入れられず、いずれも別の病院に搬送された。検査機器が水につかるなど被害額は約30億円に上り、被災前のような医療提供態勢に戻るまでに約5カ月を要した。
22年に災害拠点病院に指定された病院は浸水深0・5~1メートルの洪水浸水想定区域にある。このため水の浸入を防ぐ止水板や土のうを購入するなど、災害時の対応を検討するさなかの被災だった。
病院の敷地面積約1万9000平方メートルを囲む防水壁(高さ70~160センチ、幅15センチ)が5月31日に公開された。壁は院内が床上約30センチ浸水したことを教訓にしようと、その高さにあるブロックの色を変えている。壁の内側には排水ポンプを30台設置。病院の出入り口など壁がない部分は、止水板で対応する。
院内では、浸水時に高額な医療機器がある放射線科や手術室などの扉に固定して設置できる止水板(高さ50センチ)を新たに購入した。ソフト面では、事業継続計画(BCP)の見直しや医療機器の移動訓練などを実施したと説明した。
鬼塚院長は昨年の浸水を振り返り、「土砂災害で亡くなった方を助けることができずじくじたる思いだった。地域医療の要として対策を取り、何がなんでも命を守りたい」と語った。
寄付募るCFを予定
防水壁は資材不足などで工期が長引き、6月末の完成予定。7月中には、防水壁などの費用への寄付を募るクラウドファンディング(CF)を実施する予定。問い合わせは同院(0943・72・2460)。
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