2023年4月の道路交通法改正で自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されてから1年が過ぎた。23年の着用率は30%弱にとどまり、三重県警は自転車利用者にヘルメット着用を促すなど、自転車の安全利用を呼び掛けている。
自転車の安全利用を促進する5月の「自転車月間」に合わせて県内各地で啓発活動が行われた。県警と津署は合同で5月22日、国道23号と伊勢街道の交差点を利用し、自転車利用者にヘルメット着用を呼び掛けた。警察車両の上から警察官が「DJポリス」となってマイクを握り、「自転車に乗る時はヘルメットをかぶりましょう。かぶる、かぶらないでこの先の人生が変わるかもしれません」と訴えた。
5月30日には県警と県内18警察署が県内57カ所で、イヤホンを着けて走行する交通違反者などの取り締まりや、安全利用を促す交通街頭指導を実施。津署管内の近鉄江戸橋駅前では、警察官が「自転車利用時はヘルメット着用をお願いします」と呼び掛けてチラシを配布するなど、自転車利用者に安全利用を促した。
23年4月の道路交通法改正で年齢問わず、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化された。警察庁による23年の着用率調査で県は全国で5番目に高かったが、26・5%にとどまった。県警によると、4月末までで自転車関連による人身事故の死傷者数は95人のうち、ヘルメット未着用は73人と約8割を占めたという。
14年から10年間のヘルメット着用率を年代別でみると、小学生が47・8%、中学生が61・5%と、校則でヘルメット着用が義務化されている学校があることから着用率が高かったものの、高校生になるとわずか5・7%となった。
着用率が低い高校生に自転車を安全に利用してもらうため、県警はヘルメット着用の促進に力を入れている。自転車の安全利用を促す「セーフティー・バイシクルリーダー」を県内の高校生に委嘱し、自転車運転など交通安全の活動に模範的に取り組んでもらっている。
22年12月の久居農林高を皮切りに24年5月末まで計8校に委嘱した。県警交通企画課は「ヘルメットを着ける着けないかで今後の人生が大きく変わるかもしれない。自らの命を守るためにも、自転車に乗る時には、ヘルメットをかぶっていただきたい」と話した。
警察だけでなく、自転車販売店も努力義務になったヘルメット着用を促すため、工夫している。三重大前で営むサイクルベースあさひ津北店(津市栗真町屋町)はカラフルな子供用から、白や黒のシンプルな色だけでなく、外部を布で覆ったハット型などカジュアルな大人用まで全部で30種類以上が陳列されている。同店店長の前田耕平さん(34)は「種類を豊富にして通勤、通学や高齢者の方々にも手に取りやすいようにしている」と話した。
以前は子供用のヘルメットを中心に取り扱い、大人用は10種類に満たないほどの陳列状況だった。努力義務になってからは購入希望者からの問い合わせもあり、陳列スペースを広げ、大人用のヘルメットの種類を2倍に増やした。
ただ、自転車購入に際してヘルメットを勧めても、実際に購入するのは2割ほどだという。サラリーマンや高齢者が多く、前田さんは「通勤や買い物で自転車を使う人はヘルメットを買ってくれる。学生さんだと友達がかぶっていない、髪形が崩れるなどの理由で購入する人が少ない。ヘルメット着用がまだまだ浸透していないことを感じる」と話した。
ヘルメット着用率を高めるには、利用者の安全意識の向上が欠かせない。交通経済学の鈴木裕介・福岡大教授は「利用者にとってヘルメット着用は大きなハードルになっている。わざわざ買わなければいけないし、若い人にとっては着用して不快感を抱く人もいる。命を守るためにもヘルメットをかぶる必要性を理解してもらわないといけない」と話した。【渋谷雅也】
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