高品質なみかんづくりには成長途中で間引く摘果作業が欠かせないが、摘果されたものはそのまま捨てられることが多い。そんな摘果みかんを活用しようと、愛媛県八幡浜市を拠点に活動する若者たちがハンドクリームを開発した。アイデアを世に出してから約3年。14日に開かれた同市の道の駅でのイベントに出店し、ようやく初めての対面販売にこぎ着けた。
企画したのは同県西予市の介護福祉士、鈴屋拓人さん(20)だ。八幡浜市にある県立川之石高校2年だった2021年3月、同市のビジネスコンペティションに参加。高校生部門最優秀賞を受賞したアイデアを基に、卒業後の22年4月に仲間とともに任意団体「オレンジまるごとプロジェクト」を立ち上げて開発を進めた。摘果作業が行われるのは夏が多く、時期的に傷みやすい。みかんの品質管理には特に苦労したと振り返る。
視覚障害がある母と手をつなぐのが幼少期から当たり前だったという鈴屋さん。荒れていると、「疲れているのかな」と心配になった。大切な人の手を守りたい、との思いが開発の根底にある。
摘果みかんは八幡浜市の提携農家から仕入れ、ハンドクリームには抽出したオイルなどが含まれている。商品名は「ナチュラルハンドクリームMUKU(ムク)」(1本50グラム、税込み3300円)。「よりおいしいミカンを作るための犠牲が『報(むく)』われる」、天然由来成分のみの「無垢(むく)なイメージ」という意味を込めて名付けた。熟す前の柑橘(かんきつ)らしいさわやかでほのかな甘さを感じる香りで、サラサラとした付け心地が特徴だ。「障害の有無を超えて関わり合える社会にしたい」と、地元の障害者向け作業所に包装を依頼した。
鈴屋さんは「支援してくれた人たちの期待に応えようと開発を進めてきた。幅広い方に手に取ってもらえれば」と話している。
公式オンラインショップ(https://omp.official.ec)で購入できる。【山中宏之】
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