熊本市の慈恵病院が設置し、親が育てられない乳幼児を預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を巡り、同市の専門部会は5日 2022年度まで3年間の運用を検証した報告書をまとめた。預けられた子どもが思春期・成人期を迎えている現状を踏まえ、当事者が出自を知る権利を保障する法整備などを国に求めている。
こうのとりのゆりかごの運用は07年5月に始まり、23年度までに計179人が預けられた。市は有識者の専門部会で約3年ごとに社会的課題を検証。
報告書は、国への要望として、出自を知る権利の保障についての法整備と出自情報を保管する方策の検討▽出自情報の国の機関での継続的かつ安全な場所での保管の検討――を掲げた。
ゆりかごの匿名性についても評価した。実親が匿名を希望した場合でも赤ちゃんを受け入れている現状について、殺人や遺棄を防ぐ「緊急避難」の機能を認める一方、人権や養育環境の面から「最後まで匿名を貫くことは容認できない」と言及。慈恵病院側に、可能な限り相談につなぎ、身元判明のため努力するよう要望した。
この日、安部計彦部会長(元西南学院大教授)が市に報告書を提出。大西一史市長は「課題をどう乗り越えるか、対応を考えたい」と述べた。市は報告書を踏まえ、近く国などへ要望を伝える。
一方、慈恵病院の蓮田健(たけし)院長は、実名を求めるあまりに実親が預け入れを断念する恐れを指摘。「代替手段を提示せず匿名を容認できないと言うのは現実的でない。机上の空論と思う」と訴えた。【中村敦茂】
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