モデル事業に参加したシャローム保育園の1歳児クラス=横浜市青葉区で2024年5月28日午前10時45分、阿部絢美撮影

 子ども・子育て支援金制度の創設に伴い、親が働いているかに関わらず子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」が2026年度から本格的に始まる。現在は一部の地域で試行されており、育児負担の軽減や孤立・孤独解消などが期待される一方、保育士への負担が増えるなど課題もある。保育園の利用は親の就労が要件のため、保育行政にとって大きな転換点を迎える。子育て世帯のニーズにどう応えられるか注目が集まる。

 「育児や家事にゆとりが持ててすごく助かったと保護者から好評でした」。昨年度、国のモデル事業に参加した横浜市の認可保育園「シャローム保育園」の村田稔園長(55)は振り返る。

 こども誰でも通園制度は今年度、6カ月から満3歳未満が対象で、月10時間を上限に利用できる。料金は1時間300円(平均)だ。札幌市や千葉市、大阪市、福岡市など115自治体の空きのある保育園などで開始される見通しだ。

モデル事業に参加したシャローム保育園の1歳児クラス。保育士が絵本を読み始めると園児が集まった=横浜市青葉区で2024年5月28日午前10時59分、阿部絢美撮影

 同保育園が参加した昨年度の時点では、利用時間の上限などはなく、定期的な利用を目的としていた。募集を開始すると、専業主婦らから利用の申し込みが相次いだという。

 家事や育児で時間に追われる母親からの要望が多く、時には子育てアドバイスを求められることもあった。「ある母親からは3食の栄養バランスやオムツの外し方などを質問されました。子育てに不安があったようなので寄り添いました」と担当した保育士の谷畑伴子副主任(43)は明かす。村田園長は「保育園が地域で子育てを担う役割だと認識してもらえれば」と力を込める。

 子育て世帯の期待もある。生後2カ月の男児を育てる新潟市内の女性(30)は「リフレッシュとして利用したい」と前向きだ。昨年度の利用者が多かった福岡市では、月の利用上限を独自に40時間に増やした。

保育現場の受け止めは…

子ども・子育て支援金制度の実施に向けた今後のスケジュール

 ただ、慢性的な人手不足に悩む保育現場からは、手の掛かる乳幼児の受け入れを懸念する声も上がる。小規模認可保育園「ディルーカ保育園新蒲田園」(東京都大田区)の片岡竜希園長(33)は「初めての通園で子どもは泣きっぱなしになる。保育士がかかりきりになれば、他の子どもをみる余裕がなくなる。保育の質が担保できない」と不安視する。

 保育士らでつくる民間団体は1741市区町村の保育担当部署にアンケート調査で制度の本格実施に向けた課題を複数回答で尋ねた。417自治体(24%)から回答があり、一番多かったのが「保育士確保などの現場の体制整備が間に合わない」の74%だった。

 国の補助額は子ども1人につき1時間850円。保護者が負担する300円を加えても保育園側の収益は1時間1150円に過ぎない。片岡園長は「保育士の平均時給(1200円程度)よりも低く、現場の負担感を考えると積極的に受け入れたいと思えない。保育園が活用したいと思える予算を付けてほしい」と要望する。本格的な運用開始まで詰めるべき点は多い。【阿部絢美】

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